西崎憲『蕃東国年代記』を読む
三大年代記と言えば,光瀬龍『宇宙年代記』,ラーベ『雀横丁年代記』,そしてこの『蕃東(ばんどん)国年代記』(創元推理文庫)である。
あっ。レイ・ブラッドベリ『火星年代記』を忘れていた。
日本海に浮かぶ架空の島国,蕃東(ばんどん)の中世が舞台。
30歳の貴族,宇内(うない)と17歳の従者,藍佐(らんざ)が様々な驚異に出会うという物語。王朝怪異譚とでも呼ぼうか。
だが,民衆がわりと生き生きとしているので,日本史で言えば,平安朝というよりは室町時代のような雰囲気もある。完全にこの世と隔絶した十二国記シリーズや精霊の守り人シリーズの世界とは異なり,蕃東は唐土や倭国とも交易しており,ファンタジーだが現世と地続きでもある。
澁澤龍彦『高丘親王航海記』を読んだときと似たような読了感があり楽しい。
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