グルーポ・ヂ・フーアのダンス,「イノア」を観てきた
この日曜日,ツマとYCAMに出かけた。
ブラジルのダンスカンパニー「グルーポ・ヂ・フーア」のダンス,「イノア」を見るためである。
ダンサーたちが,ぶつかる寸前の距離感を保ちながら舞い踊るという緊迫感に満ちたダンスで,素晴らしいとしか言いようがない公演だった。
さて,老生がダンスを観た後で困るのが,それを語るための語彙の少なさである。
今,手元にあるアランの『芸術の体系』(光文社古典新訳文庫)の第二章「ダンスと装飾」を開いているところだが,全然ダメ。うまい言葉が見つからない。
仕方がないので拙い言葉で語るしかない。
舞台には合計10名のダンサーが登場した。ストリートダンスをベースにしたダンスを見せる。痙攣をしているかのような手の動き,驚異的な跳躍,ほとんど重力を感じさせない着地,いずれにしても筋肉と関節の精妙なコントロールには感嘆せざるを得ない。
ダンサーたちが舞い踊る舞台装置も素晴らしい。舞台の上方,三方に横長のスクリーンが配置されているのだが,これらはいわば,舞台の外界を垣間見せる高窓である。これらのスクリーンに映し出される空や遠くの山,近くの電線は,明け方,昼,夕方,夜,そして明け方,と表情を変化させ,舞台上の時間の経過を示している。
ダンサーたちは,ある時は二人ずつ,また別の時は10人全員で舞い踊る。二人で舞うときはまるでカポエイラを観ているかのような緊迫感を感じさせる。群舞の時には全体として複雑なポリフォニーを成し,10人どころではなく,20人あるいは30人ものダンサーが舞っているような錯覚を引き起こす。
こういう驚異的な身体芸術が成立するのは,超絶的なダンス・テクニックとそれを可能にする強靭な肉体があってのもの。
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