多田等観『チベット』を読む
先々月,多田等観『チベット』(岩波新書)がアンコール復刊されたので購入した。
多田等観師は明治から昭和にかけての僧侶・仏教学者である。秋田出身。
若き日,ダライ・ラマ13世が派遣したチベットの留学生3人の世話をした際,チベット語を習得してしまったという語学の天才。
チベットの留学生に秋田弁を仕込んでしまったせいで日本語教師の役を解任されてしまったという面白エピソードもある。
大正2(1913)年から10年間,ダライ・ラマ13世の庇護の下,三大寺院の一つ,セラ寺で学び,ゲシェー(博士)の学位を得た。本書はそのときの経験・見聞をもとに書かれたものである。
師は序文で「西蔵(チベット)人は機会あるごとに,ラマ教ありて西蔵国があると言っている。蓋し,西蔵の人文も,その政治組織も,その自然すらもが,ラマ教と不可分の関係に存する」と書いている。
この故に,本書の内容はまず,ラマ教(今では通常,チベット仏教と呼ぶ)を概説するところから始まっている。寺院は一種の国家あるいは企業をなしており,司法僧,医僧,事務僧,会計僧,商売僧といった人々もいるというあたりが面白い。
チベット関係の手ごろな本が出るとすぐ買ってしまう。昨年も『チベット仏教王伝』(参考)
や『ユトク伝』(参考)などを読んできたが,また,うちの本棚にチベット書が鎮座することになるわけである。
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