東方書店で『中国質屋業史』を購入
東京出張のついでに神保町の東方書店に立ち寄り,同書店刊行の本を買ってきた:
浅田泰三『中国質屋業史』(東方書店,1997年)
この本によると,質(抵当)をとるという行為は大昔から存在するが,業として質屋が営まれるようになったのは南北朝時代らしい。
南朝の仏教寺院が経営する「寺庫」が最初の質屋業ということである。
坊主丸儲けとはこのことかと。
最初は伽藍建立や慈善のための資金を稼ぐことが目的だったらしいが,後には単なる金儲けと化していく。唐代になると民営の質屋業(質庫),宋代になると官営の質屋業が加わり,質屋業は隆盛を極める。
この本で初めて知ったのだが,「寺庫」の発展を支えたのは,当時の仏教界にあった「福徳」思想と「無尽蔵」思想なのだという。
福徳思想とは,善行を施すことによって幸福と利益が得られるとする思想である。
そして,無尽蔵思想とは,日本における「頼母子(たのもし)」と同じで,母子が無限に続くように,金が利を生み,利が利を生むことによって無限に利が生産されるという思想である。
そもそもの原始仏教にはこれらの思想はなかったと思うのだが,古代・中世の中国仏教(三階教)ではこういう思想が広がっていたようである。
なお,現代の中国語では質に入れることを「典当(ディエンダン,diǎndàng)」という。
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