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2018.04.08

(続)時枝誠記(ときえだ・もとき)『国語学史』を読む

以前紹介した時枝誠記(ときえだ・もとき)の『国語学史』(岩波文庫)を再読しているが,やはり面白い。

老生は国語学に関しては門外漢である。だが,別分野の研究者であっても,なるほどと首肯できる主張があちこちに登場する。

前にも紹介したが,例えば,これ:

「国語学の任務は,国語の事実を適切に整理し,体系化するところにあるのではなくして,国語の発見ということが根本の任務であり……」(29ページ)

試みに,「国語」の部分を「経営」を置き換えてみる。すると,「経営学の根本の任務は経営の発見」ということになる。つまり,経営学というのは,誰かが定めた経営学を体系的に教育研究することではなく,経営とは何か,ということを追求し,現実世界の中から経営の本質を見出すことが本務である,ということである。

よくよく考えれば,「これが経営だ」という定番があれば,それを教えればよいのであって,経営を考究する必要は無くなるわけである。

また,研究史の意義を述べた,次の一文も重要である:

「国語学史を国語に対する意識の展開史として観察しなければならない」(164ページ)

研究史というのは,「○○年に某が▲▲を発見した云々」という事実の羅列ではない。それは単なる年表である。研究史というのは,過去の研究者がどのような意識をもって対象を研究してきたのか,ということを知る学問である。そして,研究史を通して,現代の研究者は,どのように研究対象を意識し,どのような方法論で研究に取り組めばよいのか,を理解することができるのである。

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