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2018.04.30

吉田類『酒は人の上に人を造らず』を読む

今年の正月下旬に上梓された吉田類『酒は人の上に人を造らず』(中公新書)を読み終えた。酒に関する蘊蓄ではなく,酒場の人間学,参与観察の本である。

吉田類らしく読んでいて楽しく余情のある文章。「軽妙洒脱」と評したいところだが,「洒脱」には「俗気がなく,さっぱりしている」という意味があり,「俗気」の部分で引っかかるので,「軽妙情味」という造語で評しておく。

以前読んだ,『酒場詩人の流儀』(中公新書)との違いは,一つ一つのエッセイの長さ。

『酒場詩人の流儀』には「新潟日報」や「北海道新聞」に掲載された,2ページ程度の短いエッセイがまとめられていたのだが,この『酒は人の上に人を造らず』には「中央公論」に掲載された,7ページぐらいのそれなりの長さのエッセイがまとめられている。

一つのエッセイには数か所の酒場のことが取り上げられている。東京・神田の話だと思って読んでいると,いつのまにか場面は宮津・天橋立に飛んでいく。

「酒は,時空を自在に浮遊する息吹を魂に吹き込む妙薬でもある」(176ページ)

と著者が書いているように,酒を介してあらゆる場面が一つのエッセイにまとめられているのである。


◆   ◆   ◆


このエッセイ集を読んでいて,頻繁に出くわすのが,著者が意識を失うところ。

酔って帰った博多のホテルで寝込み,筏で漂流する悪夢を見て飛び起きたところ,風呂のお湯を出しっぱなしにして大洪水を起こしていたという話。山登りを終えて疲労困憊したところで,訪れた河川敷の酒場「たぬきや」に行ったはずが,気がついたら自分の職場での新年会になっていたという話。

こんなに朦朧としていて大丈夫か?と思うのだが,翌日にはアルコールは分解され,二日酔いはないというのだから驚かされる。


◆   ◆   ◆


酒や人が好きでありながら決してのめり込まないのが良い。老生が好きな一文を引用する:

「屋台の灯とネオンが揺れる運河沿いの光景は,どこか浮世離れしている。そんなシーンの中へ紛れるには,ファッションだってさりげない工夫がほしい。ダークな色使いで,ハットかハンティングを被り,軽いストールを巻く。あれっ,どこかで見かけたような……。」

酒場に溶け込む自分自身さえも観察する視点が面白い。


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2018.04.29

4月なのにオクトーバーフェスト

4月だというのに,今,山口ではオクトーバーフェストが開催されている。

Octoberfest

本場ドイツのビール30種類以上が飲める――ということで行かざるを得なくなった。

結構な賑わい。

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老生は「プランク」という店に行き,グラス保証金として1000円(デポジット。後で返金される)を加算してビールとソーセージの盛り合わせを注文。

ビールはプランク・ヘフェヴァイツェンを選んだ。

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真昼間から屋外でビールを飲むのはとても楽しい。

ヴェクセル・パルティという楽団が来ていて雰囲気を盛り立てていた。

〽 Ein Prosit, Ein Prosit, der Gemütlichkeit !

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2018.04.27

南北首脳会談にちなんで:再読『「大日本帝国」崩壊』

去年の終戦記念日に加藤聖文『「大日本帝国」崩壊』(中公新書2015,2009年7月)を読んだわけである(参照)。

本日,南北首脳会談が開催されているのだが,南北分断に至る原因の一端は当時の宗主国日本が担っていた。そこで,同書第2章の「京城―幻の「解放」」を再読したわけである。

以下はそのあらすじ。


1945年8月9日,ソ連は満洲に侵攻するとともに朝鮮の咸鏡北道・羅津への爆撃を行った。これはこの時点では朝鮮への侵攻を意図したものではなく,満洲にいる関東軍の退路を断つための支援攻撃であった。

この攻撃に朝鮮総督府は大慌て。日本が降伏したら,一気にソ連軍がソウルに入り,政治犯を釈放,親ソ政権が樹立されるものと恐れおののいた。

そこで,朝鮮総督府が考えたのは,朝鮮人リーダーたちに権限を移譲し,治安維持,とくに在朝日本人の安全を確保することだった。

この案に呂運亨ら朝鮮人リーダーたちも応じ,そうしてできたのが,「朝鮮建国準備委員会」(建準)である。

総督府と建準が共同で終戦処理に当たることができれば理想的なのだが,事態はそれを許さなかった。総督府の消極性に加え,ソ連の朝鮮北部への侵攻が始まり,総督府が地方機関を掌握できなくなってきた。機能不全になった総督府は事態の収拾を,出来て間もない建準に丸投げした。

建準は建準で問題があった。終戦直後,朝鮮では政治団体が雨後の筍のように乱立・対立し,建準はこれらをまとめることができなかった。

総督府も建準も頼りにならないということで,治安維持に乗り出したのは当時,朝鮮に展開していた第17方面軍(朝鮮軍)である。在朝日本人の保護に関しては,これまた総督府を頼れないということで,在朝日本人らが自ら「日本人世話会」を組織し,これを第17方面軍がバックアップするという体制ができた。ここまでが終戦後数日間の動き。

ここに至って,総督府は建準を見限り,あとは米軍にすべてを委ねることに方針転換。戦後処理プロセスから朝鮮人は外された。9月9日に総督府で日章旗が下ろされ,星条旗が翻ったのは象徴的であった。

米軍政下では呂運亨,安在鴻宋鎮禹金九といった独立運動の闘士たちによる争いが続いていたが,最後に米軍に選ばれたのは在米生活が長く,英語にも堪能な李承晩だった。残りの人々は権力闘争の中で暗殺されていく。

ここまでの話は朝鮮半島の南側の話。北側ではソ連軍主導で「奇妙な権力移譲」が行われた。ソ連軍によって,現地の日本軍および官僚の幹部が逮捕されると,新たに行政の担い手として朝鮮人たちによる「平安南道人民政治委員会」が誕生した。南側と異なり,北側では朝鮮人が当事者として行政に関わることができたが,内実は複雑だった。人民委員会は建準系と共産系との相乗り組織だったが,次第に共産系が主導権を握るようになり,さらに共産系も,ソ連軍の後押しを受けた謎の人物,金日成が掌握するようになる。


◆   ◆   ◆


ちなみに,南北分断を決めた38度線のことだが,本書によれば,これは8月10日から翌日にかけてワシントンで開催されたSWNCC(国務・陸軍・海軍三省調整委員会)で,朝鮮半島に関心を持たない軍人によって,思い付きのように引かれた線なのだそうだ。

当時,日本軍は朝鮮北部で頑強にソ連軍に抵抗しており,スターリンの関心は朝鮮半島ではなく遼東半島にあったという。朝鮮総督府と日本軍とが強力に朝鮮半島の保持に努めていたら,歴史は変わったかもしれないと愚案する。

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「猫」を使ってのネパール語作文

石井溥『基礎ネパール語』(大学書林)を開いての作文練習。

同書にはこんな文例はないが,練習のため創作してみる:


के तपाईंको बिरालो कहाँ छ ?
ke tapaaiiko biraalo kahaa cha?
あなたの猫はどこにいますか?

मेरो बिरालो मेरो घरमा छ ।
mero biraalo mero gharmaa cha.
私の猫は私の家にいます。


多分,こんなくどい返事はしない。もっと短く,

मेरो घरमा छ ।
mero gharmaa cha.
私の家にいます。

と答えるだろう。

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2018.04.26

(続×13)最近のおこま嬢

この写真は先月のものだが,

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おこま嬢は今月になっても猫ヒーターの上で寝ることが多い。

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猫は本当に寒がりだと思う。というか,ぬくもりがあると落ち着くのか。

それにしても頭はヒーターからはみ出る。

ソファーのクッションに猫の毛がつくので,いつもコロコロをかけなくてはいけない。

ちなみに現在勉強中のネパール語で猫は

बिरालो
bi raa lo

である。

यो मेरो बिरालो हो ।
yo mero biraalo ho.

これは私の猫です。

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2018.04.25

ネパールの民族

ネパールは多民族国家で,125の民族/カーストが居住している。

National Planning Commission Secretariat, Central Bureau of Statisticsが発行している"National Population and Housing Census 2011 (National Report)" (November, 2012)によれば,民族/カーストの構成は次の図の通りである。

Nepalpop_2

チェトリ(Chhetree)およびバフン(Brahman - Hill)はパールバティ・ヒンドゥーと呼ばれる民族集団の中の上位カーストだが,両者合わせて人口の29%も占めている。

これらに続くのが,シナ・チベット語族のマガール(Magar),印欧語族インド語派のタルー(Tharu),シナ・チベット語族のタマン(Tamang),シナ・チベット語族のネワール(Newar)で,以上を合わせると人口の半数を超える。

首都があるカトマンズ盆地に長らく(3世紀以降)居住していたのがネワール族で,カトマンズ、パタン、バクタプルの歴史的建造物はネワール族によるものである。

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2018.04.24

ネパール語で"this is a pen."と"how are you?"

英語で最初に習うのは"Hello."か"This is a pen."か。

まあ,"This is a pen."を使うことはまずない。だが,文法を学ぶためにはこの文がよく使われる。

ちなみに,ロシア語を学んだとき,最初に習ったのは

<<Это - ручка.>>

やはり"This is a pen."だった。

ネパール語ではどうかというと,こうなる:

Devanagari04

デーバナーガリー文字にだいぶ慣れてきた。

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2018.04.23

牡丹咲く

宇部市ときわ公園のぼたん苑では,牡丹の花が今を盛りと咲き誇っている。

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恥ずかしながら,今まで牡丹と芍薬の違いを知らなかった。
牡丹も芍薬もボタン科だが,

牡丹は

  • 木(木本)
  • 4月下旬から5月上旬が開花期
  • つぼみが尖っている
  • 葉につやがない

という特徴があるのに対して,

芍薬は

  • 草(草本)
  • 5月上旬から5月下旬が開花期
  • つぼみが丸い
  • 葉につやがある

という特徴がある。

牡丹にもいろいろな品種がある。

例えば,↓これは「左大臣」という:

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↓これは「島の輝き」という:

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↓これは濃い紫が美しい「烏ヶ仙(からすがさん)」:

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↓これは天上の白さ「天衣」:

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↓これは「ハイヌーン」。黄色に西洋のバラを感じたが,やはりアメリカ種フランス産とのこと:

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牡丹芳,牡丹芳

黄金蕊綻紅玉房


・・・・・・


花開花落二十日

一城之人皆若狂


・・・・・・


白居易

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2018.04.22

デーバナーガリー文字表と五十音図(その2)

今もなお,石井溥『基礎ネパール語』(大学書林)を開いて,デーバナーガリー文字の練習をしている最中である。

前の記事で述べたように,デーバーナーガリー文字の並び方と日本語の仮名の並び方との間には関係がある。

前の記事では母音「あいうえお」の順番について述べたが,本記事では「あかさたな」の順番について触れる。

母音字のトップ,/a/を表すデーバナーガリー文字と,子音字を表すデーバナーガリー文字を辞書の順番に並べる。

そして,日本語に無い発音のデーバナーガリー文字を削ると,最終的には「あかさたなはまやらわ」によく似た文字の列が残る。

Devanagari3_2

「さ」にあたるデーバナーガリー文字が,「ちゃ」あるいは「つぁ」の発音になっているのはご愛敬。

これで,並び方の上では,日本語の仮名とデーバナーガリー文字がサンスクリット文字を親とする兄弟であることがわかる。

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2018.04.20

デーバナーガリー文字表と五十音図(その1)

石井溥『基礎ネパール語』(大学書林)を紐解きながら,デーバナーガリー文字の練習をしているわけである。

デーバーナーガリー文字の並び方と日本語の仮名の五十音図との関係が見えてきて面白い。

まず,母音であるが,日本語では「あいうえお」が母音とされる。

そして,デーバナーガリー文字では伝統的に母音の仲間とされる /ri/ /rii/ /li/ /lii/の4文字も含めて,14文字が母音字とされている。

そして,デーバナーガリー文字の母音のうち,日本語の仮名では母音とされないものや一文字で表さないものを削って並べ治すと・・・

Devanagari

このように「あいうえお」となる。

実は,五十音表の仮名の順番は古代インド音声学の成果に基づいているのでこうなるのである。

言語学の基礎」というウェブページで解説されている(「五十音図の謎」)のだが,要するに,

古代インド音声学→サンスクリット文字の配列→仏教伝来→五十音表の成立

という仏教受容の歴史的な流れの中で日本語の五十音図ができたのである。

一方,インドでは,

サンスクリット文字→デーバナーガリー文字

というようにデーバナーガリー文字がサンスクリット文字に取って代わった際に,並び順が継承された。

では,「あかさたな」の方はどうか? これについては次回説明する。

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2018.04.19

デーバナーガリー文字の勉強

仕事の都合上,ネパール語を独習している。

やはり,こういう場合は定番の「大学書林」である。

石井溥『基礎ネパール語』(大学書林)を紐解き,まずはデーバナーガリー文字の練習から開始。

とりあえず,母音は覚えた。

「アイウ」の文字はこんな感じ:

Devanagari

少しずつ読み書きできるようになると楽しい。

ネット上にはデーバナーガリー文字の書き方をまとめたサイトもあって,これも役に立つ:

参考記事: デーバナーガリー文字のかきかた」(タ メタ タ ポーネーティカ)

あと,デーバナーガリー文字をパソコンで打ちたかったら,このサイトが役に立つ:

"Devanagari Keyboard Online" (LEXILOGOS)

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2018.04.18

共和党員の母,バーバラ・ブッシュ逝く 92歳

GOPこと共和党の母,ジョージ・H・W・ブッシュの妻であり,ジョージ・W・ブッシュの母であったバーバラ・ブッシュが92歳で亡くなったとのニュース:

Barbara Bush, Republican matriarch and former first lady, dies at 92 (by John Crawley and Jamie Gangel, CNN, April 18, 2018)

ブッシュ(父),ブッシュ(子)両大統領については毀誉褒貶あろうかと思うが,バーバラに対しては好意的な印象を持つ人が多かろうと思う。

白髪。パールのアクセサリー。親しみやすい性格。鷹揚な物言い(ただし,失言も多かった)。

識字,教育こそが貧困を無くすという考えの下,リテラシーの向上に努めた。HIV感染者や白血病患者への支援にも積極的だった。

彼女が1990年にWellesley Collegeで行ったスピーチはアメリカのベストスピーチ100の45位に選ばれている(参考)。

"And who knows? Somewhere out in this audience may even be someone who will one day follow in my footsteps, and preside over the White House as the President's spouse - and I wish him well."

という一節は有名。

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2018.04.17

スパークリング獺祭を飲む

「純米大吟醸スパークリング50 獺祭 (Sparkling 50)」を飲んだ。

お馴染み「獺祭」(旭酒造)の派生商品である。

アルコール分14度,精米歩合50%。

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この酒,面白いのは,上澄みの辛い部分と,底の方の滓(おり)の溜まった甘い部分との味のグラデーションが楽しめるところ。純米酒から乳酸飲料に変化するように感じられる。

甘いとは言っても,以前に飲んだ「スパークリング雁木」(参照)の方が甘くてまろやかである。

最近はこういう和製シャンパンとでもいうべきものが増えてきて面白い。

日本酒好きには邪道と呼ばれるかもしれないが,「変っていくのが日本酒の伝統」(by 旭酒造・桜井博志会長)であるから,スパークリング清酒はアリ,である。

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2018.04.16

ウォン・カーウァイ『欲望の翼』 | 王家衛『阿飛正傳』を観てきた

1960年4月16日3時1分前
君は僕といた
この1分を忘れない――


YCAMで,ウォン・カーウァイ(王家衛)『欲望の翼(阿飛正傳)』デジタルリマスター版を観てきた。

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オープニング。ゆっくりとパンしていくヤシ林の美しさ。

温帯夏雨気候の都市ならではの気怠さと,登場人物たちの徐々に嵩じていく焦燥感とが映画全編を支配している。

ヨディ,スー,ミミ,サブ,タイド,男女の思いがすれ違う。

レスリー・チャン,マギー・チャン,カリーナ・ラウ,ジャッキー・チュン,アンディ・ラウ,香港のスーパースターたちが一堂に会した奇跡の作品。

ほんとに香港の俳優陣は魅力的だ。北京官話もままならないのに,広東語を勉強しようかと思ったぐらい。

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2018.04.15

吉田裕『日本軍兵士』を読む

先日購入した吉田裕『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』(中公新書)を読んだ。

この本は今,ものすごく売れている。2017年12月25日に上梓されたのだが,すでに第7版に達している。

太平洋戦争について語った歴史書は非常に多いが,兵士たちの目線で当時の実情をまとめ上げた歴史書は少なく(個々人の体験記は莫大な数が存在するが),その意味では大変画期的な本だと思う。

まず何より驚くのが,アジア・太平洋戦争(日中戦争+太平洋戦争)の日本人犠牲者310万人のうち,その9割が1944年以降に死んだものと推定されること。

そして,さらに驚くのが,日中戦争以降の軍人・軍属の戦没者230万人のうち,餓死者は37%(秦郁彦説)から61%(藤原彰説)に上ると推定されること,である。

戦没というと,砲弾に斃れたイメージが強いが,実際には餓死したものが相当数いるということである。ガダルカナル島のことを「ガ島」ではなく「餓島」と呼んだという体験記をよく見るが,ガダルカナル島のみならず戦域全体で餓死が死因の上位を占めていたことがわかる。昨年,塚本晋也監督の『野火』を観たが,兵士の関心の第一は,戦闘ではなく食糧だった。

他にも,30万人を超える海没者もおり,自殺者や「処置」と称して始末された傷病兵もおり,つまりは戦う前に,あるいは戦った後に死に追いやられた者が圧倒的な数,存在するということである。日本軍兵士の三分の一から半分は,連合国軍にではなく,日本軍自体に殺された,と言ってよい。


◆   ◆   ◆


ちなみに本書によると,日本政府は年次別の戦没者を公表していないとのこと。著者は岩手県の年次別戦没者データをもとに,日本人戦没者の推移を推定した。米国では年次別どころか,月別の戦死者データをまとめているとのこと。

「日米間の格差は,政府の責任で果たすべき戦後処理の問題にまで及んでいる」(26ページ)

と著者は述べるが,まさにその通り。

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2018.04.13

大林宣彦監督『花筐』を観てきた

ゆきずりの
まぼろしの
花の宴
苦しくも
たふとしや
檀一雄


YCAMで大林宣彦監督の遺作(まだ生きています)『花筐』を観てきた。

いやー,どえらい映画である。

太平洋戦争直前,大学予科の学生たちと女学生たちの青春群像。

爽やかなものを想像すると大間違い。バッハの無伴奏チェロ組曲が流れ,唐津くんちの山車が走り,黒澤明の『夢』や鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』を上回りかねないドギツイ映像美の中で,濃いぃ面々が命の炎を燃やす。

大学予科の学生を演ずるのは,窪塚俊介,満島真之助,長塚圭史,柄本時生。この人たちが18~20歳を演ずるのだから凄い。強烈すぎる笑顔の窪塚俊介,やたら脱いでる満島真之助,生きてるのか長塚圭史,安定の柄本時生。

女学生陣も,お人形さんのような矢作穂香(結核に侵された薄幸の美少女),まあ普通の山崎紘菜,不穏な門脇麦と,とても濃い。そして,窪塚俊介演じる榊山俊彦の叔母役の常盤貴子の妖艶さ。

ラストシーンも強烈。観客に向けた大林宣彦監督のメッセージが炸裂。

君は飛べるのか?!

大林宣彦監督は『野火』を撮った塚本晋也に対して,「自分は戦後の映画監督,君は戦前の映画監督」と言ったらしいが,本作でその意味が分かったような気がする。

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2018.04.12

また買ってしまった:『日本軍兵士』,『征夷大将軍研究の最前線』,『マッドメン』

読み切れないのに本を買ってしまう。もはや宿痾と言ってもよい。

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今回は,

の3冊。

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2018.04.11

国学スーパースター列伝

時枝誠記(ときえだ・もとき)の『国語学史』(岩波文庫)のことだが,章立てのアンバランスが凄い。

本文(中扉含む)全体で248ページあるのに対し,「第三期 明和安永期より江戸末期」の記述は90ページ,全体に占める割合が36%を越えている。

この時代は用字法と語法の研究において輝かしい発展があった時代で,音韻と活用の法則がまとめられた。

この時代に割かれたページの多さは,そのまま,この時代の国語学研究に対する時枝誠記の思い入れの強さを表していると言ってよいだろう。

いや実際,この時代に国語学に成果をもたらした国学者たちを並べてみると,綺羅星のようにまばゆい:

本居宣長の係り結び,留まり切れを中心とする「てにをは」研究,富士谷成章の語の接続の研究,そしてこれらを統合する鈴木朖。それを引き継いだ本居春庭による動詞活用研究の原型。そして義門による活用研究の集大成。

「第三期 明和安永期より江戸末期」の90ページは国学スーパースター列伝の様相を呈している。

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2018.04.10

Research | 研究とは何ぞや?

Research Methodology | 研究方法論についてまとまった文章を書くことになった。

そもそも"research"とは何ぞやということで英英辞典にあたってみたのだが,やや混迷の様相を呈してきた。

OEDではこのように定義されている:

research : the systematic investigation into and study of materials and sources in order to establish facts and reach new conclusions

また,老生が高校の時から使っている,A. S. Hornbyの英英辞典"Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English"(Oxford Kaitakusha)によれば:

research : investigation undertaken in order to discover new facts, get additional information, etc

とある。

これらの定義を読んで沸き起こった問題点は,"investication"もまた研究のことじゃなかったかなぁということ。「研究とは研究である」という定義だと,トートロジーになってしまう。

そこで今度は"investigate"をHornbyの英英辞典で引いてみることにした:

investigate : examine, inquire into, make a careful study of

"examine"と"study"は良いが,"inquire into"が気にかかる。さらにHornbyの英英辞典で引いてみた:

inquire into : try to learn the facts about

○○に関する事実を学び取ろうとする…という感じか。

ここまで調べてきたことを総合すると,"investigation"は「注意深く調べること」というぐらいの意味。

そして"research"は,「新たな事実を発見したり,新たな結論を導き出したりするために,系統立てて注意深く調べること」という意味になろうか。

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2018.04.09

「X-MEN」スピンオフ・ドラマ「レギオン (LEGION)」のSeason 2が始まってしまった

「X-MEN」スピンオフ・ドラマ「レギオン (LEGION)」のSeason 2が始まってしまった。

以前,本ブログで紹介したように,このドラマのSeason 1は凄まじく面白かった(参照)。

Season 1の最終回,主人公デヴィッド・ハラー (レギオン;ダン・スティーブンス)の脳内からシャドウキング=レニーが追い出されたものの,レニーオリバーと共に旅立ってしまった。そして,デヴィッドは謎の球体に吸い込まれて行方不明になってしまった。

それを受けての新シリーズスタートである。

新シリーズ第1話では,デヴィッドはいつの間にか救出されているのだが,様子が変(まあいつも変だが)。デヴィッドは数日行方不明になっていたように感じているが,実際には1年近い月日が経過していた。

その間,シャドウキング=レニーは世界を回って,人々の精神を壊し続けている。シャドウキングにやられた人々は歯をガタガタ言わせる謎の症状を呈していた。デヴィッドをはじめとするミュータントたちは,かつて敵だったディヴィジョン3と協力してシャドウキングを捕まえようとしている。

ディヴィジョン3の指揮を執っているのがフクヤマ提督という虚無僧姿の謎の人物。本人はしゃべらず,口ひげを生やした3人の女性(ロボットらしい)が代わりにしゃべるという面白設定。フクヤマ提督は幼い頃,大脳皮質にデバイスを埋め込まれたサイボーグであり,デヴィッドですら心を読み取ることができない。

それにしても,このドラマの魅力は現実と妄想の区別がつかなくなるというところ。以前の記事でも述べたが,脳の内外の出来事が入り乱れて,まるで映画「インセプション (Inception)」を見ているかのような奇妙で魅力的で混乱した映像世界が展開されている。第1話の途中で紹介された,荘子の「胡蝶の夢」の話が,物語全体を暗示している。

脳内の人格とも言えるレニー(オーブリー・プラザ)の狂気に満ちた演技がとても良い。

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2018.04.08

(続)時枝誠記(ときえだ・もとき)『国語学史』を読む

以前紹介した時枝誠記(ときえだ・もとき)の『国語学史』(岩波文庫)を再読しているが,やはり面白い。

老生は国語学に関しては門外漢である。だが,別分野の研究者であっても,なるほどと首肯できる主張があちこちに登場する。

前にも紹介したが,例えば,これ:

「国語学の任務は,国語の事実を適切に整理し,体系化するところにあるのではなくして,国語の発見ということが根本の任務であり……」(29ページ)

試みに,「国語」の部分を「経営」を置き換えてみる。すると,「経営学の根本の任務は経営の発見」ということになる。つまり,経営学というのは,誰かが定めた経営学を体系的に教育研究することではなく,経営とは何か,ということを追求し,現実世界の中から経営の本質を見出すことが本務である,ということである。

よくよく考えれば,「これが経営だ」という定番があれば,それを教えればよいのであって,経営を考究する必要は無くなるわけである。

また,研究史の意義を述べた,次の一文も重要である:

「国語学史を国語に対する意識の展開史として観察しなければならない」(164ページ)

研究史というのは,「○○年に某が▲▲を発見した云々」という事実の羅列ではない。それは単なる年表である。研究史というのは,過去の研究者がどのような意識をもって対象を研究してきたのか,ということを知る学問である。そして,研究史を通して,現代の研究者は,どのように研究対象を意識し,どのような方法論で研究に取り組めばよいのか,を理解することができるのである。

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2018.04.06

Rでネパールのdistrict別人口密度の塗分け地図を作る

およそ1年ぶりにRの記事を書く。

今回はネパールの郡(district)別の人口密度の塗分け地図を作ってみた。

119pxflag_of_nepal

スクリプトは次の通り:

詳細はここに記載。

出来上がりはこれ:

Nplpopdens

首都圏(カトマンドゥ郡,バクタプル郡,ラリトプル郡)の人口密度が非常に高いことがわかる。カトマンドゥなんか,1平方キロメートル当たり4500人以上である。

この地図では75郡だが,実は,2015年の憲法で行政区分がいろいろと変わり,現在ではナワルパラシ郡とルクム郡は東西に分割されて77郡となっている。

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2018.04.05

グアテマラ・コーヒー

グアテマラからお客さんが来て,お土産にコーヒーをくれた。

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たっぷり440gもある。計量スプーンとマヤ人を描いたマグカップも貰った。

グアテマラは農業国で,コーヒー,砂糖,バナナがおもな輸出品である。

人口1,658万人。北海道と四国を合わせたぐらいの面積の国である。

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International Coffee Organizationのウェブページで世界のコーヒー生産量を調べてみたら,こんな結果だった。

2017/18年度の1位から13位
(シェア1%以上の国)
×1000[袋(60㎏入り)] シェア[%]
Brazil 51500 32.4
Viet Nam 28500 17.9
Colombia 14000 8.8
Indonesia 10800 6.8
Honduras 8349 5.3
Ethiopia 7650 4.8
India 5840 3.7
Uganda 5100 3.2
Peru 4600 2.9
Mexico 4000 2.5
Guatemala 3800 2.4
Nicaragua 2500 1.6
Costa Rica 1560 1.0
World 158930 100

ということでグアテマラは世界11位のコーヒー生産国である。

もらったコーヒーはマイルドな味わいだった。

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2018.04.04

最近食べたお菓子2点

先日,「デンマーク・デザイン展 ヒュゲのかたち」に行ってきたのだが,その際,ミュージアムショップで買ったのが,これ,ダニッシュ・ミニクッキーである。

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中身はクッキーというかビスケットで,まあまあのお味だが,大事なのは入れ物の缶。

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ロイヤルコペンハーゲンから許可を得た「ブルーフルーテッド」の柄である。上品な感じで良い。

お次は,生協で購入したアイス。

この巴屋のアイスモナカは一味違う。

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まず,アイスがシャーベット風でいわゆる「アイスクリン」。さわやかな味わい。

そして皮は本物の最中(モナカ)の皮。

明治・大正にアイスモナカを作ったら,こんな感じだろう。


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2018.04.03

常盤公園は花盛り

まあ,いつだって何らかの花は咲いているのだが。

常盤公園には桜を見に行ったのだが,木蓮(モクレン,マグノリア)もまた咲き誇っていた。

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ここにあるのはサラサモクレンだと思うのだが,ソメイヨシノと並んでいると遠目には区別がつかない。

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常盤公園には「ぼたん苑」と名付けられた一角があり,移築された古民家の周りに和風の庭が設えてある。

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そこから眺める景色はのどかで良い。

ここからは有料ゾーンになるが,植物館では昨日紹介したヒスイカズラ以外にも今が盛りの花々を見ることができる。

たとえば,サボテン(黄雪晃):

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サボテンの花と言えば,赤や濃いピンクをイメージするが,黄色い花というのは珍しい。

ユーフォルビア・カラキアス・ウルフェニィもまた黄色い花をつけている。

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アーモンドもまた開花している:

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日本で桜を鑑賞するように,中東ではアーモンドの花を観賞する。どちらもバラ科だ。

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2018.04.02

ときわミュージアム「世界を旅する植物館」ではヒスイカズラの花が真っ盛り

宇部市常盤公園のときわミュージアム「世界を旅する植物館」に行って来た。

様々な地域の花を楽しめる植物館なのだが,まずは,涼しげな青が魅力的な蘭,バンダ・セルレア (Vanda coerulea)が出迎えてくれる。

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タイ北部が主な原産地だとか。

そして圧巻なのは,今を盛りと咲き誇る,ヒスイカズラの花である。

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翡翠というかエメラルドというか,あまりの美しさに息をのむ。

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春は桜を見るのも,この公園を訪れる目的の一つだが,ヒスイカズラを見るのもまた目的の一つである。

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2018.04.01

スティーブン・ノムラ・シブル監督"Ryuichi Sakamoto: CODA"を観てきた

YCAMでスティーブン・ノムラ・シブル監督"Ryuichi Sakamoto: CODA"を観てきた。

Coda

2012年から5年間の密着取材によって,震災以降の坂本龍一の音楽の変化,アルバム"async"の制作過程を追ったドキュメンタリー。

ここ数年間のキョージュの日々の生活だけでなく,YMO時代はもちろんのこと,「戦場のメリークリスマス」,「ラストエンペラー」,「シェルタリングスカイ」の映画音楽を担当した際の制作風景や裏話も見ることができ,盛りだくさんの内容である。

キョージュがタルコフスキーを,映画監督としてだけではなく,音楽家として尊敬しているということが,この映画における最大の発見である。

たしかに本作で引用されているタルコフスキー『惑星ソラリス』の一シーン,バッハのコラール(BWV639)が流れる中,クリス・ケルビンがハリーとともに無重力状態で浮かび上がるシーンは,映画を見ているというより音楽を聴いているような感じである。

キョージュの"async"に収められた"Solari"はこのシーンに対するオマージュというように受け取られた。

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