小笠原豊樹訳『プレヴェール詩集』を読む
さて,2月も終わりである。
昨年夏に買って,うちの本棚に鎮座していた『プレヴェール詩集』(小笠原豊樹訳,岩波文庫)をパラパラとめくっているのだが,どの詩も面白い。
『天井桟敷の人々』の脚本家であり,シャンソン『枯れ葉』の作詞家でもあるジャック・プレヴェールは優れた詩人でもある。
映画『パターソン』(参照)で,終わりごろに登場した日本人の詩人(演ずるは永瀬正敏)が,詩を訳すのはナンセンスだとか言っていたと思う。
しかし,小笠原豊樹によるプレヴェールの詩の訳は,それはそれで優れたものに生まれ変わっていると思う(残念ながら老生はフランス語ができないので,もとの詩の良さを堪能できない)。
例えばこれ,「はやくこないかな」
はやくこないかな しずかな一人ぐらし
はやくこないかな 楽しいお葬式
この冒頭の2行のあと,サスペンスとユーモアに満ちた30行あまりが続く。詩なのにドラマだ。
また,「猫と小鳥」も良い。最後の一行で
中途半端は一番良くない
と教訓めいた言葉で結んでいるが,そこに至るまでの二十数行で小鳥の悲劇,猫の後悔がギュッと凝縮して描かれている。これもドラマだ,数分間の。猫と小鳥もまた何らかの象徴なのだろうが。
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