西京シネクラブで『わたしは,ダニエル・ブレイク』
西京シネクラブでツマと共にケン・ローチ監督『わたしは,ダニエル・ブレイク』を見てきた。
観た人も多かろうと思うが本記事でも一応あらすじを書いてみる。
ダニエル・ブレイク59歳。40年間大工として働いてきた。
妻に先立たれ,今は一人住まいである。
心臓の病に見舞われ,仕事を続けられなくなった。
しかし,国から手当てを受けようとしたところ,就労可能と判断されてしまった。不服を申し立てようとすると,ネット上で申請しろだのあれこれ杓子定規な対応を受ける羽目に。
失業手当を受けようとすれば,ドクター・ストップをかけられているのにもかかわらず就労可能と判断されているため,就職活動を強制されるというナンセンスな状況にダニエルは追い込まれる。
理不尽な役所とのやり取りが続く間,ダニエルは困窮にあえぐ母子に出会う。自身も困窮しているのにもかかわらず,ダニエルはこの親子に救いの手を差し伸べる。
ダニエルや母子の生活には一瞬,一条の光が差し込んだかのように見えた。しかし,ダニエルも母子も次第により困難な状況に陥っていく・・・・・・。
ダニエルはあらゆる困難に粘り強く立ち向かう。そんな人間の尊厳を根こそぎ奪おうとするのが,イギリスの社会保障システムである。本作は,ケン・ローチ監督の弱者に対する暖かなまなざしと,現今の社会制度に対する静かな怒りに満ちている。
今のイギリスには,一度でも貧困に陥ると,そこから抜け出すことができない,という恐ろしい現実がある。社会保障を受けようとしても,煩瑣な手続きの中で挫けてしまう。英政府はびた一文払いたくないのだ。加えて,寝室税という奇妙な制度まで作って困窮家庭への補助を大幅に削っている。そういう状況を作った,保守党内閣デーヴィッド・キャメロン首相とイアン・ダンカン・スミス労働・年金大臣の罪は重い。
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