『物類称呼』:難読地名「特牛」を「こっとい」と読むことについて
神田神保町で買った『物類称呼』をパラパラ見ていると面白い記述がある。
牛の呼称に関してこのような記述がある:
「牛 うし〇特牛<をうし>を畿内及び中国四国ともに こつとい と云 東国には こてといふ」(『物類称呼』岩波文庫,32ページ)
山口県下関豊北町には「特牛<こっとい>」という地名があり,難読地名でもトップクラスとなっている。なぜ,特牛を「こっとい」と読むのか,理由はともかく,両者の関連を『物類称呼』は示しているのである。
まず,牡牛のことを「特牛」と書く。そして,西日本では牡牛を「こっとい」という。だから「特牛」は「こっとい」なのである。
江戸時代に編纂された,この『物類称呼』には記されていないが,じつは古語では重荷を負うことのできる強健な牡牛のことを,「特牛」と書き,「こというし」と言っていた。万葉集にも梁塵秘抄にも出てくる言葉である。万葉集では「こというしの」は「三宅」にかかる枕詞でもある。
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