『チベット仏教王伝』を読む
このところ,ソナム・ギェルツェン著・今枝由郎監訳『チベット仏教王伝』(岩波文庫)を読んでいる。
ソナム・ギェルツェンは14世紀のサキャ派の学僧である。この本ではチベットへの仏教伝来とチベット(吐蕃)の統一者・ソンツェン・ガンポ王(在位:581年~649年)の生涯が記されている。
チベットに仏教が伝来したのはソンツェン・ガンポ王の治世下,7世紀前半のことだった。唐から嫁いだ王妃・文成公主とネパールから嫁いだ王妃・ティツンの進めによってソンツェン・ガンポ王は仏教に帰依した。
チベットは観音信仰の強い国であるが,『チベット仏教王伝』によれば,それは,遥か昔,観音菩薩が辺境の有雪国チベットを教化することを強く誓い,同地に赴いたことに由来する。
チベットの衆生が苦しんでいる姿を見て観音菩薩は涙した。そのとき,右目からこぼれた涙はブリクティー女尊となり,左目からこぼれた涙はターラー女尊となった。この二女尊は観音菩薩を支えることを誓った。
↑ターラー女尊(ターラー菩薩)
後世,ブリクティー女尊はネパール妃ティツンとなり,ターラー女尊は中国妃文成公主となったという。勘のいい読者はこれでだいたい想像がつくと思うが,ソンツェン・ガンポ王は観音菩薩の化身として現れたのである。そして,両妃の助けを得て,チベットの教化にあたったというわけである。
文成公主に関しては,コバルト文庫から毛利志生子著『風の王国』というシリーズが出ており,『チベット仏教王伝』の解説では同シリーズを読むことを薦めている。
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