バウドリーノもイブン・ジュバイルもアッシジの聖フランチェスコも義経も同時代人
ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』の下巻を読んでいるところだが,今回はその内容について触れるのはお休みにして,バウドリーノがいた時代について考えてみたい。
上巻の内容でわかるように,バウドリーノは1142年生まれで,自分の半生を物語っているのは1204年のコンスタンティノープルでのこと。
登場人物である神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ1世やニケタス・コニアテスが同時代人だというのは当たり前のことだが,よくよく考えると,以前本ブログで紹介した(参照)バレンシア生まれの旅行家,イブン・ジュバイル(1145-1217)も同時代人である。バウドリーノはイブン・ジュバイルより3つ年上となる。
ちなみにイブン・ジュバイルはイスラムの英雄サラディンと十字軍勢力がエルサレムを巡って闘いを繰り広げている時代に,キリスト教徒であるジェノバ人の船で巡礼の旅に出て無事に帰ってきており,当時の人々が全て宗教戦争に関わっていたわけではないことがわかる。
ほかにどんな同時代人がいるのか調べてみたら,アッシジの聖フランチェスコ(1182-1226)も同じ時代の人だった。なお,アッシジの聖フランチェスコについてはニコス・カザンツァキの名著『アシジの貧者』があるので,読んでみて下さい。
ほかにもグルジアの黄金時代を築いた女王タマル(1160-1213)も同時代人。この人の場合,コンスタンティノープル陥落後にビザンツ帝国皇族によって建国されたトレビゾンド帝国に助力をしているわけで,本書『バウドリーノ』の内容と無関係とは言えない。
さて,わが国ではどうだったかというと,バウドリーノの時代は,平家が栄華を極め,そして滅亡していった時代である。清盛,義経,頼朝がバウドリーノの同時代人。
というように羅列したバウドリーノの同時代人に関する事跡を簡単にまとめた年表を下に示そう:
小生にとって興味のある人々の事跡をまとめてみたわけだが,実はこの時代にはこの表に出てきた人々をはるかに凌駕する人物がいる。それは・・・
世界帝国を創建した男,
チンギス・カン(1162-1227)
である。
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コメント
鎌倉仏教の時代ですね。
ひとりひとり歴史に名の残るほどの宗教的天才が同時期にあれだけの人数で世に現れたこと、日本史において突出した現象ではないでしょうか。
やはり特殊な時代=移行期とみるべきでしょうか
投稿: 拾伍谷 | 2017.07.02 04:13