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2017.07.24

橋本一子:HIGH EXCENTRIQUE PIANO MUSICとD.M.

1989年。この年の初めに天皇が崩御。ほぼひと月後の2月9日に,手塚治虫若王子支店長が死去し,昭和の終わりを実感させた。

春,老生は大学に進み,清水から大阪へと居を移した。平成時代の始まりである。

大阪では,通学途中,よく梅田のナカイ楽器に立ち寄った。そこで最初に買ったのが,橋本一子の"HIGH EXCENTRIQUE PIANO MUSIC"である。


HIGH EXCENTRIQUE PIANO MUSIC


"HIGH EXCENTRIQUE PIANO MUSIC"は,こでまでの声楽曲を中心としたアルバムとは趣が異なり,ドビュッシー,メシアン,そして橋本一子本人による器楽曲を収めたアルバムである。橋本一子自身のピアニスト/現代音楽家としての側面が全面に出ている。

1ko89highexcentricpianomusic

  1. プレリュード第1集 音と香りは夕暮れの大気に漂う
  2. プレリュード第1集 雪の上の足跡
  3. プレリュード第1集 亜麻色の髪の乙女
  4. 幼児イエズスに注ぐ20のまなざし XI.聖母の初聖体拝受
  5. 幼児イエズスに注ぐ20のまなざし XIV.天使のまなざし
  6. 幼児イエズスに注ぐ20のまなざし XVI.予言者と羊飼いと東方の博士のまなざし
  7. Frozen - The World's End 凍りついた終末又は柔らかな悲しみのために I.プロローグ-閉ざされた夢は静かにきらめく-
  8. Frozen - The World's End 凍りついた終末又は柔らかな悲しみのために II.悲しみは甘く柔らかな記憶
  9. Frozen - The World's End 凍りついた終末又は柔らかな悲しみのために III.銀色の光は香りの中を踊る
  10. Frozen - The World's End 凍りついた終末又は柔らかな悲しみのために IV.すべての眠りと目覚めのために
  11. Frozen - The World's End 凍りついた終末又は柔らかな悲しみのために V.恍惚の惑星
  12. Frozen - The World's End 凍りついた終末又は柔らかな悲しみのために VI.エピローグ - 終わりは始まりの始まりは終わりのために -

初めの3曲はドビュッシーの名作。そして4から6曲目は,メシアンの大作"幼児イエズスに注ぐ20のまなざし"からの3曲。

7曲目からはいよいよ橋本一子による作品。ジャズやポップミュージックだけでなく,現代音楽も手掛けることができる,橋本一子の多才ぶり。器用するぎる。かつて手塚眞が激賞しただけある。老生が好きなのは11曲目で,「恍惚」を音で表すとこうなるか,と感心した。「世界のおわり」は前作"HIGH EXCENTRIQUE"から続くモチーフだが,エピローグのサブタイトルが示すように,「終わりは始まりために」あるというのが大事なポイント。シヴァ神みたい。

ドビュッシーを演奏する段階では"excentrique"さは感じられないが,メシアンを演奏するにいたって,凍った狂気のようなものを感じ,"Frozen - The World's End"に至って,狂気が炸裂するような構成だ。

ちなみにメシアンの曲を聴いたのはこれが初めて。その後,マルタ・アルゲリッチ&アレクサンドル・ラビノヴィチによる『メシアン:アーメンの幻影』とかジョン・オグドン『幼児イエズスに注ぐ20のまなざし』とかに手を出すきっかけとなった。

ドビュッシーについては,坂本龍一がドビュッシーにあこがれてサインまで練習していたというのは有名な話(「スコラ・音楽の学校」より)。ドビュッシー→坂本龍一→YMO→橋本一子→ドビュッシーという強引な連想ゲームが思い浮かぶ。


D.M.


この年,もう一枚,アルバムが出た。"D.M."である。

1ko89dm

  1. D.M.NO.4
  2. コミュニケーション
  3. エリクシール
  4. レテ
  5. ボサ
  6. ナイト・バード・フライング
  7. フローズン・エクスタシー
  8. イール
  9. フローズン NO.2
  10. 生まれた時から
  11. 羽根の気持ち
  12. 終わりは始まりの 始まりは終わりのために

お気に入りは8曲目の"フローズン・エクスタシー"と10曲目の"フローズン NO.2"。

"フローズン・エクスタシー"はインストゥルメンタル。荘厳な何かが壊されていくのを目の当たりにしつつ天の高みへと上昇し続けるような快感がある。

"フローズン NO.2"は狂女の歌。わざと音程を外したかのような歌い方には冷や冷やするし,「ラジオの電波で目をくらませて」というまさしく電波系の歌詞にも凄みを感じる。


◆   ◆   ◆


ということで,89年に出た2つのアルバムを取り上げたわけだが,聞き直してみると実に良い。時代とかあまり感じない。というか,老生の時間が止まっているのかも。

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