橋本一子:BEAUTYからHIGH EXCENTRIQUEまで
「橋本」は「マナミ」ではなく「一子」の枕詞だ,と老生は思っている。
先日,YoutubeでYMOの古い映像資料(夜のヒットスタジオ出演,1980年6月2日)を見ていたら,細野晴臣の後ろにいるキーボード奏者が橋本一子だったので,とても懐かしかった。
濃いファンの方々には恐れ多い話だが,老生は高校の時からファンだったので,感興の赴くままに手元の橋本一子のCDを引っ張り出して並べてみた。今回は"BEAUTY"から"HIGH EXCENTRIC"まで:
まず,これ"BEAUTY"(1985)
収録曲は歌とインストゥルメンタル合わせて11曲:
- I LOVE YOUR MUSIC
- TAMARE KURAWANKA
- SCULPTURED BLUE
- PACHACAMAC
- CINNAMON AND CLOVE
- ROMANTIC BLUE
- NAJA NAJA
- PEGASAS
- KITSUNE
- WE ARE ONLY DANCIN'
- CATCH ME ON MERRY-GO-ROUND
CDについているブックレットには,谷山浩子による短い物語「セピオラ」というのがついている。
2曲目の"TAMARE KURAWANKA"はタイトル勝ちの曲。脳裏に焼き付いて消えない。
4曲目の"PACHACAMAC"。豊田有恒の『パチャカマに落ちる陽』が頭に浮かぶ。
7曲目の"NAJA NAJA"は後々まで続く橋本一子の音楽のモチーフである。NAJA NAJAが何なのかは未だに分かっていない。アンドレ・ブルトンの「ナジャ」を真っ先に思い浮かべていたのだが,それだと"NADJA"のはず。"NAJA NAJA"だとインドコブラのことだ。
実は最初に買ったCDはこの"VIVANT"(1986)。「SFマガジン」誌に激賞気味の紹介記事があったので,興味を持って購入したのだった。
- 遊園地の恋 (introduction)
- D.P.
- JUKE BOX
- DREAMIN' ANIMALS
- FLOWER
- LA BELLE EXCENTRIQUE
- VENUS
- IZABEL IN FUTURE
- SEED
- MUSEUM
- LAND OF A 1000 DANCES
- FINE (encore)
2曲目の"D.P."を初めて聞いたとき,とても驚いたのを覚えている。とてもカッコよかった。
6曲目と7曲目はいずれもドラマチックな楽曲。"LA BELLE EXCENTRIQUE"を寝る前に聞くと悪夢を,"VENUS"を聞くとサスペンスタッチの夢を見そう。
11曲目の"LAND OF A 1000 DANCES"(ダンス天国)にはちょっとクレージーさが垣間見られ,後で紹介するアルバム"high excentrique"の前兆ではないかと思われる一曲である。
この"MOOD MUSIC"(1987)はジャズだのボサノバだの,文字通り,ムーディーな曲ばかり。
- The Girl From Ipanema
- Poinciana
- Night And Day
- How Insensitive (Insensatez)
- Flower
- ile de etrange
- Moanin'
- One Note Samba (Samba De Uma Nota So)
- A Stranger in Paradise
- April In Paris
- Je Te Veux
これらのうち,"The Girl From Ipanema", "How Insensitive", "One Note Samba"はあのアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲である。
ただし,"The Girl From Ipanema"については,
もとの歌詞(英訳だが)で
"Tall and tanned and young and lovely, The girl from Ipanema"
であるべきところ,
"Tall and tan and young and handsome, The boy from Ipanema"
と歌われている。対象が女性から男性に,そして視点が男性から女性に切り替わっている。橋本一子はイパネマの少女になりきって,イパネマの少年のことを歌い上げているわけである。橋本一子の楽曲の重要なモチーフである,永遠の乙女心とでもいうべきものがここにある。
本記事最後に取り上げるのは"HIGH EXCENTRIQUE"(1988)である。
- Crazy People in the Secret Club
- Excentrique Underground
- Sweet Sweet Diamond
- 夢の羽根
- Strange Paradise
- The Door
- Money
- Hold On I'm Comin'
- Lunatic Radicals
- 世界のおわりと世界の創造
- Blue Cathedral
- Tuesday Morning
"excentrique"(英語だったら"excentric"よりも"eccentric"と綴る方が多いようだ)と銘打っているだけあって,風変わり,というよりもクレージーな曲揃い。テナーサックスを菊地成孔が担当していて,なんだか納得。"VIVANT"収録の"LAND OF A 1000 DANCES"(ダンス天国)にあった予兆が,ここで現実のものとなった感がある。橋本一子の楽曲の重要なモチーフには,"excentrique"もある。しかし,最後の"Tuesday Morning"には別の重要なモチーフである「永遠の乙女心」が満載されており,クールダウンして終了。
というわけで,4枚紹介したが,これらは老生が高校生の時に聞いたもの。聞き直したら疲れたので,残りのアルバムについては稿を改めて述べる。
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