科研費のルールが変更になった件
多くの大学の研究者にとって,最大の研究資金源となっているのが「科学研究費助成事業」,いわゆる「科研費」である。
秋口に申請書を書いて応募し,採択されれば春から数十万円から数百万円の研究費を使えるようになる。採択率は分野や種目によって異なるが,平成28年度の基盤研究Cを例にとれば,応募総数38,049件で,採択率は29.9%。
これが得られるかどうかは死活問題。なにしろ,昨今では各大学が財政的に困窮し,一人当たりの研究費が年間10万円を切っているところも珍しくない。
昨年末に科研費の審査ルールが変更になったことを知らない人もが多いので,一応,メモ的に紹介する。
平成30年度助成に係る審査からはこんな感じになる:
- 審査区分表が変わる
- 「分科細目表」は廃止
- →新審査区分の新設
- 種目の新設・廃止
- 挑戦的萌芽廃止→ 挑戦研究新設
- 若手A廃止→ 基盤研究Bに統合
- 若手B廃止→ 若手研究新設
- 「若手」の定義の変更
- 年齢制限撤廃
- "young researcher"から"early career researcher (博士学位取得から8年以内)"に
- 種目によって審査方法が変わる
- 基盤(B, C)と若手→ 2段階書面審査,「小区分」が審査区分に
- 挑戦的・基盤(A)→ 総合審査,「中区分」が審査区分に
- 基盤(S)→ 総合審査,「大区分」が審査区分に
平成29年度助成の「分科細目表」と平成30年度助成の「審査区分表(総表)」とを比べてみると,医学・工学以外はずいぶんと分類の仕方が変わっているので要注意。
例えば「科学社会学・科学技術史」を例にとってみる:
平成29年度助成の「分科細目表」では「細目番号1901」,分野は「総合領域」,系は「総合系」
となっていたが,
平成30年度助成の「審査区分表(総表)」では「小区分01080」,「中区分1:思想,芸術およびその関連分野」,「大区分A」
となった。科研費に応募しようと思う大学研究者(あと,公的機関の研究者)はちゃんと新しい表を見て,自分の専門分野がどこに引っ越したか確認すること。
詳細は「日本学術振興会」の解説ページ「科研費改革の動向について」を参照のこと。
ちなみに,科研費総額は年間2300億円弱。科研費を必要とする研究者はだいたい10万人。均等に配分したら230万円。科研費全部を競争的資金にしないで,1000億円ぐらいを研究費が無くて苦しんでいる研究者にも100万円ずつ配分したら慈雨となり,随分と科学技術が発達すると思うのだが,そういうことを言っちゃダメなんでしょうね。
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