« 2017年5月 | トップページ

2017.06.26

(続×9)最近のおこま嬢

いつものように,おこま嬢の写真を掲載する。

Sdsc_0894

なんか長い。

Sdsc_0895

こうやって撮り方を変えると,さらに体が延びたように見える。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

ウンベルト・エーコの『バウドリーノ』は面白い

「ゴーメンガースト」三部作を読み終えて以来,分厚い本ばかり本でいるのだが,『バウドリーノ』(岩波文庫)も結構厚い。

こういうどこか遠くの世界の話を読むのが最近の小生のブームである。

バウドリーノはニケタス・コニアテスに対してこう語った:

「ほかの世界を想像するにこしたことはありません。 <中略> 私たちが生きている世界がいかに苦しいものであるかを忘れるためには。 少なくとも当時,私はそう思っていました。 ほかの世界を想像することが,結局はこの世界を変えることにつながるということにまだ気づいていなかったのです。」(上巻176頁)

これに対して,

「さしあたりは,神の意思が授けたこの世で平穏に生きようではありませんか」とニケタスは言った。(上巻176頁)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.22

ウンベルト・エーコ『バウドリーノ』読み始め

ウンベルト・エーコ作,堤康徳訳『バウドリーノ』を読み始めた。

これは今年の4月に岩波文庫に入ったのだが,『犬と鬼』とか他の本を読むのを優先していたので,今頃読み始めることになった次第。

【あらすじ】
西暦1204年。第4回十字軍によって略奪され,破壊されるがままとなっているコンスタンティノープル市街を眼下に見下ろす一室。ビザンツ帝国の高官にして歴史家のニケタス・コニアテスを相手に,言語の天才にして稀代のほら吹き,バウドリーノが,その驚くべき半生を語りはじめる……。

小難しいお話かもしれないと思い,身構えて読み始めたが,エーコのヨーロッパ中世に関する莫大な知識とユーモア溢れる記述に魅かれて,ずいぶんとハイペースで読み進めてしまった。

語学力があり,頭脳明晰であるとともに,ほら吹きでもある主人公・バウドリーノの語り口が非常に魅力的。

バウドリーノの話の聞き手がビザンツ帝国高官で,ときおり西欧人とビザンツ人の価値観や習慣がぶつかったりするのがとても面白い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.20

【雁木】「スパークリング雁木」を飲む

獺祭はメジャーになり過ぎたので,他の地酒を飲みたいと思うわけである。

以前紹介した村重酒造の「金冠黒松」は値段と味のバランスから言うと,獺祭よりもコストパフォーマンスが良いと思う。「2011年春季・全国酒類コンクール・純米酒部門第1位」だし。その辺の話はだいぶ前に「坂口謹一郎『日本の酒』を読みながら」という記事の中でダラダラと書いた。

今回紹介するのは岩国の八百新酒造の「雁木」,それも珍しい「スパークリング雁木」である。純米発泡にごり酒。

昨日,ちょっとしたお祝い事があったので,飲んでみた。

すっきりした甘口で(ほんとに甘い。和製シャンパンだ),お嬢様・奥様方にも喜ばれること請け合い。アルコール度数は14度。

Sdsc_0849

720ml,1700円。広島駅のお土産コーナーで買った。

シャンパン以上の発泡性があるので,開栓時には細心の注意が必要だ。キンキンに冷やしたうえでほんのわずかずつ開栓しないといけない。泡が吹き出しそうになったら閉める。そしてまた微妙に蓋を回して開ける――という作業を数分間繰り返してからようやく飲める。

Sdsc_0890

忍耐力が必要だが,飲んでみると労力に見合った味わいが楽しめる。飲み過ぎて二日酔いにならないように。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.19

科研費のルールが変更になった件

多くの大学の研究者にとって,最大の研究資金源となっているのが「科学研究費助成事業」,いわゆる「科研費」である。

秋口に申請書を書いて応募し,採択されれば春から数十万円から数百万円の研究費を使えるようになる。採択率は分野や種目によって異なるが,平成28年度の基盤研究Cを例にとれば,応募総数38,049件で,採択率は29.9%。

これが得られるかどうかは死活問題。なにしろ,昨今では各大学が財政的に困窮し,一人当たりの研究費が年間10万円を切っているところも珍しくない。

昨年末に科研費の審査ルールが変更になったことを知らない人もが多いので,一応,メモ的に紹介する。

平成30年度助成に係る審査からはこんな感じになる:

  • 審査区分表が変わる
    • 「分科細目表」は廃止
    • →新審査区分の新設
  • 種目の新設・廃止
    • 挑戦的萌芽廃止→ 挑戦研究新設
    • 若手A廃止→ 基盤研究Bに統合
    • 若手B廃止→ 若手研究新設
  • 「若手」の定義の変更
    • 年齢制限撤廃
    • "young researcher"から"early career researcher (博士学位取得から8年以内)"に
  • 種目によって審査方法が変わる
    • 基盤(B, C)と若手→ 2段階書面審査,「小区分」が審査区分に
    • 挑戦的・基盤(A)→ 総合審査,「中区分」が審査区分に
    • 基盤(S)→ 総合審査,「大区分」が審査区分に

平成29年度助成の「分科細目表」と平成30年度助成の「審査区分表(総表)」とを比べてみると,医学・工学以外はずいぶんと分類の仕方が変わっているので要注意。

例えば「科学社会学・科学技術史」を例にとってみる:

平成29年度助成の「分科細目表」では「細目番号1901」,分野は「総合領域」,系は「総合系」

となっていたが,

平成30年度助成の「審査区分表(総表)」では「小区分01080」,「中区分1:思想,芸術およびその関連分野」,「大区分A」

となった。科研費に応募しようと思う大学研究者(あと,公的機関の研究者)はちゃんと新しい表を見て,自分の専門分野がどこに引っ越したか確認すること。

詳細は「日本学術振興会」の解説ページ「科研費改革の動向について」を参照のこと。


◆   ◆   ◆


ちなみに,科研費総額は年間2300億円弱。科研費を必要とする研究者はだいたい10万人。均等に配分したら230万円。科研費全部を競争的資金にしないで,1000億円ぐらいを研究費が無くて苦しんでいる研究者にも100万円ずつ配分したら慈雨となり,随分と科学技術が発達すると思うのだが,そういうことを言っちゃダメなんでしょうね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.12

ときわミュージアム「世界を旅する植物館」に行ってきたわけで

この春から「ときわ公園」にときわミュージアム「世界を旅する植物館」というのがオープンしたわけである。

以前からあった植物園を,プラントハンター・西畠清順の監修の下,リニューアルしてオープンしたもの。

どのくらい気合が入っているのか,見物に行ってきた。


この植物館では,「熱帯アジア」,「熱帯アメリカ」,「アフリカ」,「南アメリカ」,「北中アメリカ」,「ヨーロッパ」,「オセアニア」,「中国・アジア」の8ゾーンに分けて植物が展示されているのだが,なかなか見事なものが見られる。

「熱帯アジア」ゾーンではデンドロビウム・スミリエ(↓)が今を盛りに咲いていた:

Dsc_0857

他にも珍しい形のベゴニアが葉を茂らせていた:

Dsc_0856
↑ベゴニア・マソニアナ(中国)

Dsc_0855
↑レックス・ベゴニア・エスカルゴ


「熱帯アメリカ」ゾーンではパキスタキス・ルテアが黄色い花を美しく咲かせていた:

Dsc_0864_2

「熱帯アメリカ」ゾーンの名物,パラボラッチョ(↓)

Dsc_0861

「アフリカ」ゾーンの名物,バオバブの木(↓)

Dsc_0865

そしてパピルス(↓)

Dsc_0866

「ヨーロッパ」ゾーンに行けば,樹齢千年を超える見事なオリーブ(↓)や

Dsc_0873_2

Sdsc_1141


コルクガシ(↓)が見られる。

Dsc_0881


「オセアニア」ゾーンに行くと,太古を彷彿とさせる植物が見られる。

これは1994年にオーストラリアで発券された「ジュラシックツリー」(↓)。20世紀最大の発見だと言われている。

Dsc_0875

Sdsc_1134
↑ジュラシックツリーの全体像

そして,タスマニア産のディクソニア(パランディウム・アンタルクティクム)(↓)

Dsc_0877

入場料300円で,日本では滅多にお目にかかれない植物が見られるのでお得感がある。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.10

ドリヤス工場がH.P.ラヴクラフト『クトゥルフの呼び声』を漫画化したよ

リイド社が「トーチ」というWebサイトをやっている。

このサイトでは「ガロ」や「アックス」が洗練されたらこうなるだろう,というような漫画が掲載されているのだが,小生のお気に入りは水木しげる風の絵柄でおなじみのドリヤス工場による

定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。

である。

『共産党宣言』,『最終戦争論』,『D坂の殺人事件』と,ここのところ,驚くべき作品が次々に取り上げられてきたのだが,今回はさらに凄い。なんと

H. P. ラヴクラフト 『クトゥルフの呼び声』

である。水木サン風の絵柄とマッチし過ぎである。ドリヤス工場の本領発揮。

邪教の信者による呪文

「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うがふなぐる ふたぐん」

が原作ではどうなっているのか気になったので調べてみたら,

"Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn."

だった(参照:"The H. P. Lovecraft Archive")。

まあ,人類に発音できない音だという設定だから,仮名に直すこと自体が無茶。


『クトゥルフの呼び声』は創元推理文庫の『ラブクラフト全集』では2巻に収録されている。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2017.06.09

【英国総選挙2017】Is UK heading for a hung parliament?

英国総選挙の開票が進んでいるところだが,結構面白い結果になりつつある。

メイ首相は「勝つる!」との見込みのもと,総選挙の前倒し実施を表明したわけだが(2017年4月18日),その見込みは大きく外れた。

5月18日に保守党が発表したマニフェストが不評(高齢者の負担増につながる社会保障政策が入った)で,支持率が急落。潮目が変わった。

英ガーディアン紙などの行った出口調査の状況を踏まえると,過半数を制する政党が無い「ハングパーラメント」になる可能性が大きいようだ。

英ガーディアン紙の選挙特集ページ:

"Live UK election results seat-by-seat"

を見る限り,開票の序盤では労働党がシートを埋めていく勢いがすごかった。中盤では保守党と労働党が伯仲し始めてきたが。

昨年の英国離脱"Brexit"を巡る投票や米大統領選で予測を大きく外した調査機関各社は今回も戦々恐々としているものと思われる。

ハングパーラメントになると,英国のEUに対する交渉力が低下するわけだが,それは経済にどのように影響するのだろうか?

英国グズグズ→ポンド下落→円高→日本株下落?

こういうのってメカニズムが良くわからない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.08

NHKの小田切千アナウンサー,名前は「千」じゃなかった

NHKのサイトに「アナウンサー 仕事の流儀」というページがある。

おなじみのNHKアナウンサーの生い立ちとかこれまでのエピソードが紹介されているページなのだが,今回は「のど自慢」の司会で知られている,小田切千(おだぎり・せん)アナウンサーが取り上げられている。

その記事の内容がけっこう衝撃的:

"千"の謎を持つ男。」(2017年6月5日)

なんと,幼いころの名前は「千」じゃなくて,「秀一郎」だったのだという。

えー,そんなことってあるの? 戸籍上はどうなっているの? と疑問が湧くが,ここで書くとネタバレになるので詳しくはNHKのページをご覧いただきたい。

あと,御父上が国連環境計画に関わっていたので,その「かばん持ち」として海外に渡航した経験があるという。記事とともに掲載されている写真をよく見ると,1990年にモントリオール議定書のロンドン会議に出席したようだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.07

(続×8)最近のおこま嬢

久々にうちのおこま嬢の写真。

ツマが可愛く撮ったので,お見せする:

Sdsc_1095

猫ブームは終わらない。

岩合さんの番組はいつも見てます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.06

アレックス・カー『犬と鬼』読書ノート(3)

日本のバブル崩壊はいつのことなのか?

象徴的な出来事は,1989年12月29日の大納会で日経平均株価が史上最高値38957円44銭を記録したことである。この後,年明け以降下落が始まり,二度とこの値を超えることはなかった。

バブル崩壊の引き金として知られているのは,日銀による1990年3月20日の公定歩合の引き上げ(5.25%。引き上げ幅は1.00%)と,同月27日に大蔵省から通達された「総量規制」すなわち「土地関連融資の抑制について」である。

これらを踏まえると,バブル崩壊は1990年初頭と言って良いだろう。

ちなみに,このあたりの動きをまとめたのが,昨年3月に本ブログで紹介した,軽部謙介『検証 バブル失政――エリートたちはなぜ誤ったのか』である(参照)。

検証 バブル失政――エリートたちはなぜ誤ったのか検証 バブル失政――エリートたちはなぜ誤ったのか
軽部 謙介

岩波書店 2015-09-26
売り上げランキング : 70873

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


◆   ◆   ◆


さて,アレックス・カー『犬と鬼』では「第4章 バブル―よき日々の追憶」でバブル期とその後を描いている。

先に触れた『検証 バブル失政』では,バブル発生の一因を,日米の政治家や大蔵省の凄まじい圧力のもと,日銀が金融緩和に踏み切らざるを得なくなったことに帰している。

これに対して,本書では,バブル発生の根本的な原因を,大蔵省が作り上げた,簿価会計を中心とする巧妙な「仕掛け箱」=「資金供給システム」にあるとしている。

「資金供給システム」と命名したのはカレル・ヴァン・ウォルフレンだが,アレックス・カーはこの仕掛けを次のように説明している:

「企業にとっては,資金を借りれるだけ借り,買えるだけ固定資産を買い,それを絶対に売らないのが最も得策だった。土地などの資産を担保に資金を借り,その資金を株式市場に再投資する。市場は値上がりし,企業はそれによって『含み益』を手に入れ,それを担保にまた借金をし,それでまた土地を買う。これを延々くりかえしていたわけだ」(98頁)

「含み益」は簿価会計ならではの概念で,株式や不動産の購入時価格と時価との差である。株式や不動産の価格が上昇する間は「含み益」は拡大し,企業の資産は勝手に巨大化する。それを担保にすれば,多額の借金ができる。

高い経済成長が続く間はこの「資金供給システム」は順調に稼働したが,低成長になるやこのシステムはいつ崩壊してもおかしくない状態に陥った。そして,1990年代初頭,公定歩合引き上げと総量規制という一撃(二撃?)がシステムに加わって,本当に崩壊が始まる。

いわば,『検証 バブル失政』はバブル加速とバブル崩壊の近因に焦点を当てており,これに対して『犬と鬼』の第4章はバブル経済を生み出したそもそもの根本原因=遠因に焦点を当てていると言えるだろう。


◆   ◆   ◆


『犬と鬼』の第4章は,バブル前後のみならず,バブル後の10年間もカバーして論じている。その論調は,バブル崩壊後も日本市場は異常なままだったというものだ:

「――ところが,日本ではそうではなかった。収益にかかわらず株はつねに上がり続けるというのが常識になっていた。その結果,株価収益率は,ほかの国では夢にも見られないレベルに達した。たいていの国では株価収益率はせいぜい15から25である。1999年7月にアメリカ株式市場が最も膨張したときでも,株価収益率はおよそ30だった。 <中略> 対照的に,日本の平均株価収益率はグラフを突き抜けて伸び続け,1989年には70,96年4月には300を超えた。10年間足踏みしていたにもかかわらず,1999年夏の株価収益率は106.5,アメリカの3倍以上という高みにあった」(94~95頁)

ここで,株価収益率についてだが,株屋の間ではPER(Price Earnings Ratio)と略される。PER=時価総額÷純利益,もしくは株価÷一株当たり利益,で定義される。

ある会社のPERが低いということは,その会社が稼ぐ利益に対して株価が割安である,と解釈される(低PER=割安)が,急成長企業などの場合は,現時点での利益に対して株価が高く,PERがとんでもなく高い数字になることがある(高PER=将来期待)。状況をよく考えながら解釈しないといけない指標である。

上で引用した文章では,日本株のPERが異常に高かったことが述べられているが,それは日本企業が生み出す利益をはるかに超えて株価が異常な高さを示していた,もしくは利益と株価が大きく乖離していた,ということを意味している。

本当にそんなに異常だったのか,そして現状ではどうなっているのか,ちょっと確認してみよう。

日本取引所グループが公開しているPERの長期データ(参照)を見てみると,このような結果となる:

Per

これは1999年1月から2017年5月までの東証一部上場企業の平均PER(連結)を示したものである。グラフが途絶えることがたびたびあるが,これはインターネット・バブル(もしくはITバブル,ドット・コム・バブル)やリーマンショックなどによって,企業が利益を生み出せなくなった時期があるためである。

1999年6月には151.8まで上昇している。その後下がったとはいえ,2004年上半期でも100程度ある。ちょっと異常な状態が続いていたと言えるだろう。

しかし,2004年後半からは大きく低下し,近年はだいたい20前後を推移している。まあ,世界標準というか正常になってきたと言えるのではないだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2017.06.05

アレックス・カー『犬と鬼』読書ノート(2)

日本は――少なくとも20世紀の日本は――近代化に失敗した。この本の主張はこれに尽きる。

近代化とは単純な西欧化のことではない。伝統を一掃することでもない。伝統に立脚しつつ,テクノロジーをうまく活用し,移り行く状況に合わせて社会経済を改修していくことである。

日本は19世紀後半から和魂洋才の掛け声の下で西洋の技術を導入し,近代化を図ってきた。しかし,それは,マルバカイドウ(海棠)にリンゴを接ぎ木するようにはうまくいかず,木に竹を接ぐようなことになってしまった。


◆   ◆   ◆


先日の記事に続き,今回はアレックス・カー『犬と鬼』「第5章 情報―現実の異なる見方」を取り上げる。

『犬と鬼』の「第5章 情報―現実の異なる見方」では,日本の企業・省庁に広がる「建て前」,あるいは情報操作の問題が指摘されている。

要点はこの章の冒頭にまとめられている。次の通りだ:

「伝統的に日本では『真実』は神聖不可侵ではないし,『事実』も本当のことである必要はない」(『犬と鬼』117頁)
「文化的相違ははるか昔にさかのぼり,現実よりも,理想の形が『真実』となる。 <中略> この考え方は広範に及んでおり,日常生活にある本音と建て前のベースになっている。建て前にあからさまに反する現実に直面しても,何とかして建て前を守ろうとする。和を保つには,本音を隠し続けることが重要だと考えるからだ」(『犬と鬼』118頁)
「建て前は和魂の名残で, <中略> 現代のシステムに混用してしまうと,思わぬ事故を引き起こす。客が茶室で粗相をした時は見ないふりをしたほうが良いという意味ならば,建て前は好ましい態度だ。だが,これを企業のバランスシートや原発の安全報告にまで適用すると,危険で予測のつかない結果をもたらす」(『犬と鬼』118-119頁)

このように述べたのち,カーはいくつもの具体例を示していく。例えば,金融界の帳簿操作「とばし」,省庁による情報の隠蔽「知らぬ存ぜぬ」,TV・新聞の「やらせ」,動燃の「プルト君」。

日本の官界・産業界には,調和を乱さぬように情報が操作されているという根本的な問題が存在しているというわけである。

このことは本書の著述にも悪影響を及ぼしている:

「要するに,どこを見ても情報はあてにできない。私も内心恐怖に苦しんでいる。本書は統計データだらけなのに,どれくらい正確か判断できないからだ」(『犬と鬼』140頁)

情報の透明性ということが近現代の社会経済システムの中で要請されているのだが,アレックス・カーが本書を上梓した2002年時点の日本では,それは不十分だった。では15年後の現在はどうか? 最近の政界・官界の動きを見ていると,情報の透明性が向上したとは言えないように感じる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2017年5月 | トップページ