『ゴースト・イン・ザ・シェル』追記
ルパート・サンダース監督の実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』の話の追記。
「本歌取り」について
『ブレード・ランナー』がそうであるように,押井守監督のアニメ版『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』はクリエイターたちにとっての古典になっていることを再認識した。
名場面が引用されるようになってはじめて古典である。
実写版のあらすじはアニメ版とは異なる。だが,アニメ版の様々な名場面は実写版では異なる文脈で適切な形で引用=再利用されている。
引用は,古典に対するリスペクトであるとともに,現作品と古典とを接続し,限られた時間の中で作品の世界を拡大することができるという効果を持つ。つまり和歌における「本歌取り」である。
脚本について
形而上的で多様な解釈を可能とするアニメ版を好む人々にとって,実写版は問題が整理されて綺麗な謎解きになっているため,物足りなさを感じるかもしれない。だが,そうすることによって実写版は多くの人々が「攻殻」の作品世界を受容するための良い入門編となっていると思う。
小生が実写版で気に入っているのは,主人公(ヒロイン,少佐)と敵役(アンチヒーロー,アニメ版では「人形使い」,実写版ではクゼ)が魅かれ合う理由である。限られた上映時間の中で,初めて「攻殻」を見る観客に,少佐とクゼが魅かれ合う理由を理解させるためには,実写版の設定が最も適切だろう。
技術について
実写版ではSFXやVFXがふんだんに使用されているが,芸者ロボットなど,非常に手が込んでいて感心する。『怪しい伝説』でおなじみのSFXエンジニア,アダム・サヴェッジ(Adam Savage)が,Weta Workshopを訪問して,芸者ロボットについて説明を受けているのだが,その興奮っぷりといったら・・・。
あと少佐のスーツについてもワーワー言うてます:
とにかく,スタッフの実写版に懸ける熱意が伝わってくる。
前(参照)にも言ったが,「漫画研究団体アトラス」からハリウッドに至るグレートジャーニーを思う。
おまけ
- スカーレット・ヨハンソンの肩甲骨周りの肉が多め
- 荒巻(ビートたけし)の日本語のセリフが聞き辛く,英語の字幕を見てわかるという逆輸入現象
- 「キネ旬」4月下旬号で押井守が言っていたように,バセットハウンドに野良犬役は無理
- 桃井かおりの投入の仕方は良い。中国人英語のようでさらに良い。
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