塚本邦雄の『清唱千首』
先日,一の坂川まで出かけて桜の花を見たわけだが,そのとき思い出そうとして思い出せなかった歌がいくつかある。
まず,崇徳院。
朝夕に花待つころは思ひ寝の夢のうちにぞ咲きはじめける
平治の乱の10年前,31歳のときに崇徳院が詠んだ歌である。花が咲くのを今か今かと待っていたら,夢の中で先に咲き始めた―。
そして,源頼政。
くやしくも朝ゐる雲にはかられて花なき峯にわれは来にけり
山の上の雲を桜の花々かと見間違い,行ってみたら違った。悔しい。騙された―。
これらの歌はいまから15年前,塚本邦雄の『清唱千首』のページを繰りながら,選び出したお気に入りの歌である。お気に入りにもかかわらず忘れてしまったというのが,老いの始まり。
この本は,万葉の時代から安土・桃山時代までおよそ1000年の間の莫大な歌の中から,塚本邦雄が選び出した1000首をまとめたもの。
無人島に10冊だけ(1冊じゃ無理)持って行っていいと言われたら,多分これは10冊の中に入る。日本文化の精髄。
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