『ゴースト・イン・ザ・シェル』が公開されたわけで
予想通り,賛否両論。
「アニメ(1995年公開押井守版)の正しい実写化だ」「オリジナル(押井守版)には及ばない」「音楽はスティーブ・アオキのRemix版よりも川井憲次のオリジナルの方がいい」「ハリウッド版で盛り上がるニワカがうるさい」「ホワイトウォッシングだ」云々云々。
で,小生の見解であるが,ルパート・サンダース監督・スカーレット・ヨハンソン主演のハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』は
「あり」「OK」「Good job」「支持」「肯定」
である。
前に「小説・漫画の映画化を擁護する」(2015年5月29日)という記事を書いたが,そこで紹介したアンドレ・バザンの意見と同様に,この映画を肯定する。
アンドレ・バザンは「不純な映画のために」(『映画とは何か(上)』所収)という論考の中で,文学の映画化を擁護した。
その弁を踏まえれば,ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』についてこういうことができるだろう:
- 士郎正宗の原作にせよ,押井守版にせよ(あと神山健治版にせよ),これまでの作品群に新たなファンをもたらすだろう
- ハリウッド版があかんかったとしても,士郎正宗版や押井守版を評価する者たちにとっては,士郎正宗版や押井守版を害するものとはなりえない
- 士郎正宗版や押井守版を知らない観客にとっては,ハリウッド版で満足するか,さらに士郎正宗版や押井守版に興味を持つか,二つに一つである
押井守版のファンであるルパート・サンダース監督やWETAのスタッフのこの作品にかける熱意を見る限り,これまでの「攻殻機動隊」作品群にはプラスの影響こそあれ,何も失うものはないと思う。
映画音楽についても同様。
川井憲次のオリジナルが良いのは当然。
だが,スティーブ・アオキのRemixはオリジナルの凄さをさらに多くの人々に届けるのに成功していると思う。
どうでもいいけど,スティーブ・アオキはデヴォン青木の異母兄。あと,ライブ会場の皆さんは「アオキ」ではなく「エイ・オー・キー」と言ってますね。
ちなみに,下のUMF TVのインタビュー動画で語っているように,スティーブ・アオキにとって押井守版は,十代の時のお気に入りアニメであり,今回音楽を担当できたことを誇りに思っているとのこと。
シロマサ先生のペン先から始まり,押井守,神山健治ら日本のクリエーターたちにリレーされていったバトンは,さらにルパート・サンダースらハリウッドのクリエーターたちに受け継がれた。
「漫画研究団体アトラス」からハリウッド。グレートジャーニーですね。
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