中田考『イスラーム入門』を読む
テレビのニュースなどでイスラーム圏の話が出てきたときにすぐ参照できるように,リビングに置いているのが,これ:
中田考『イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉』 (集英社新書)
小生,多少はイスラームについての知識があるかと思っていたが,この本を開いてみると,まだまだ。
著者はご存知の通り,ムスリムであり,日本におけるイスラム法学の第一人者。
ムハンマドの話に始まり,スンナ派,シーア派など各派の歴史,イスラームの信仰内容,イスラーム偉人伝,現在のイスラームにおける様々な運動(解放党とかギュレン運動とか),大川周明や井筒俊彦の業績等々,限られた紙数で,イスラームに関する古今東西の重要な概念が解説されている。
ちょっと残念なのが,最初から読まないとわからない記述が多いことである。途中から読んでも大丈夫な用語集とはなっていない。ちゃんと順番に読みましょう。
節によって著述の姿勢が違っているのが面白い。イスラム協力機構や不換紙幣に対しては批判的な論調で,著者の思想的立場が明確に表れている。
本書で紹介されていた井筒俊彦の言葉を繰り返すことになるが,古代においては中国文明と対峙し,近代においては西欧文明と対峙して自らの思想を鍛え上げていった我々日本人は,今度はイスラーム文明と対峙することによって,さらに自らを深化させていかなくてはならないのだろうな,と思った (それをやってきたのが,大川周明と井筒俊彦であり,それらに続くのが本書の著者であろう)。
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