『タイタス・アローン』読了。しびれるほどカッコいいマズルハッチの言葉
『タイタス・アローン』を読み終えた。
これで,マーヴィン・ピークによる「ゴーメンガースト」3部作を読み終えたわけである。長い旅だった。
この『タイタス・アローン』は前2作と全く違った趣を持っている。
前作『ゴーメンガースト』で,スティアパイクとの一騎打ちに勝利した後,タイタスはゴーメンガースト城を後にする。
そして本作でタイタスがたどり着いたのは,あまりにも違う世界だった。
摩天楼がそびえ,巨大な工場の煙突からは煙がたなびく。自動車が行き交い,飛行艇が空を横切る。
街の人々は,あの重苦しい儀式と伝統に支配された巨大な城のことなど全く知らず,タイタスがその城主であることも当然知る由もない。
タイタスは戸惑う。その戸惑いは読者の戸惑いでもある。
『タイタス・グローン』や『ゴーメンガースト』,併せて千数百ページにも渡って展開された物語は全くの夢だったのか?
20世紀後半を思わせる大都市の中で,タイタスは狂人のような扱いを受ける。だが,そんな彼にも,マズルハッチやジュノーといった理解者があらわれる。
マズルハッチは舵のような鼻が特徴的な,体格の良い無頼の男である。
そのセリフがカッコいい。
落ち込むタイタスに対してマズルハッチはこう言った:
「生きるんだ。人生を食らい尽くせ。」
「旅をしろ。頭の中で旅をしろ。足でも旅をしろ。汚い服を着て監獄へ向かえ! 金色の車で栄光へ向かえ! 寂しさを満喫しろ。ここはたかが都に過ぎん。立ち止まる場所じゃない。」
「おまえが言ってた城はどうした・・・・・・あの薄暗い神話はよ? これっぽちの旅で引き返すのか? いいや,先へ行くんだ。ジュノーはおまえの旅の一部だ。おれだってそうだ。歩き続けろ。坊主」
『タイタス・アローン』,153頁
「生きるんだ。人生を食らい尽くせ」・・・・・・痺れますね。
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