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2017.01.31

世界三大珍味と日本三大珍味

自分用の備忘録。

世界三大珍味は:

  • トリュフ
  • キャビア
  • フォアグラ

このうちトリュフとフォアグラをまとめて賞味しようとすれば,これ:

20160604

2016年6月某日「俺のフレンチ」博多店にて「ロッシーニ風」。450gのフィレ肉にフォアグラとトリュフ


さて,日本三大珍味はというと:

  • ウニ
  • カラスミ
  • このわた

の3つ。

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2017.01.29

ソクーロフ『フランコフォニア ルーブルの記憶』を見てきた

美術館シリーズ第2弾。

YCAMでアレクサンドル・ソクーロフの『フランコフォニア ルーブルの記憶』を見てきた。

Francofoniia

この映画の主軸は,第二次世界大戦時,ルーブル美術館館長ジャック・ジョジャールとドイツ国防軍美術担当将校ヴォルフ・メッテルニヒ伯爵とがルーブルの美術品を守ったという逸話である。かつて「ルーブル美術館を救った男」というドキュメンタリーで紹介されたこともある。

だが,ソクーロフのこと,こういう美談をまっすぐに描いたりはしない。

1939年~40年のパリを舞台としてジョジャール館長とメッテルニヒ伯爵を中心にドラマが展開されているかと思うと,静寂に包まれたルーブル美術館の中で,ナポレオン一世が絵画や彫刻のコレクションを紹介して回ったり,共和国のシンボルマリアンヌが「自由,平等,博愛」とつぶやきながら彷徨ったりする様子が描かれたりする。

また,急に現代に戻って,大しけの中,コンテナ船(美術品を運んでいるのだそうだ)が今にも沈みそうになっている映像も差し込まれる。

さらに,第二次世界大戦中,建物も収蔵品も保全されたルーブルと,爆撃に遭い壊滅的な被害を受けたエルミタージュとの比較に関する考察も入る。ドイツ軍の美術品保護・修復作業の再評価も。

美しいが複雑な構成で,こういうのは映像詩というのだろうと思う。


Frankofonia original trailer from Budapest Film Zrt. on Vimeo.

小生はこの映画を見て,『太陽』と同じようなテーマを見出した。それは何かというと「破壊の中で,美や伝統を守ろうとする者を描く」というテーマである。

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NHK空想大河ドラマ「小田信夫」???

戦国大名小田氏といったら,小生が昔住んでいた茨城県新治郡千代田町近辺を治めていた,

Odaujiharu
  小田氏治 (KOEI 『信長の野望 天翔記』より)

を思い出すわけだが,今度NHKでやるドラマの主人公は全くの架空の戦国大名,小田信夫である。演ずるはホリケン。

「空想大河ドラマ」と銘打っているが,あまりのふざけっぷりにむしろ期待が高まる。ネプチューンの三人の中では泰造がもっとも大河慣れしているんだよなぁ。

原田泰造の大河ドラマ出演リスト:

  • 大久保利通,篤姫(2008年)
  • 近藤勇,龍馬伝(2010年)
  • 杉民治,花燃ゆ(2015年)

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2017.01.27

『タイタス・グローン』なんぞを読んでいる

巨大な城館で繰り広げられる,貴族の一家と使用人たちの愛憎入り混じる群像劇……

と書くと何やら『ダウントン・アビー』のようだが,そうではない。

今読んでいる『タイタス・グローン』(浅羽莢子訳)の内容である。

実は,この本,分厚いうえに,ファンタジーの世界の日常生活の描写を退屈に感じ,長年,小生の本棚に死蔵されていた。

それが,『ダウントン・アビー』を見続けていたら,貴族の生活とか使用人との関係とかよくわかるようになってきて,『タイタス・グローン』の記述が頭に入るようになってきた。予備知識は重要。

さて,『タイタス・グローン』マーヴィン・ピークの「ゴーメンガースト」三部作の第1作目である。ゴーメンガースト(Gormenghast)というのは都市国家にも匹敵するべき巨大な城の名前。ゴーメンガースト城主第77代グローン伯爵となることが約束されたタイタス・グローンが誕生することからこの話が始まる。

この物語はファンタジーに属するものだが,剣も魔法も登場しない。重苦しい雰囲気の中で緩慢に話が展開していく。特異なのはその描写というか記述である。本書の序文でアントニイ・バージェスがこう書いている:

「……作品の動きが緩慢に感じられるとすれば,それは,視覚描写の凄いほどの密度,時間への興味の欠如,そしてそれを補っている空間を満たすことへの執念ゆえである。」(本書12ページ)

情景や人物に対する「視覚描写の凄いほどの密度」は,マーヴィン・ピークが挿絵画家であったことに由来するのではないかと小生は思っている。例えば,冒頭のゴーメンガースト城の描写なんか,こんな具合である:

「ゴーメンガーストは,そのもともとの石の集合体だけを取り出して見れば,建造物としては一種重苦しい風格を呈したであろう。外壁の周囲にうじゃうじゃと寄り群がっている貧しい住居の数々を無視することが可能であったなら。それらは傾斜する地面の上にてんでに拡がり,どの小屋も半ば次の家にのしかかりながら胸壁に行く手を阻まれるまで連なり,輪の最も内側のあばら屋は巨大な壁を捕え,岩にかじりつく笠貝の如く取りついている。古い掟により,頭上高く聳える城砦とこの冷たい交わりを持つ許可を与えられているのだ。不揃いな屋根の上には季節を問わず,時に蝕まれた控え壁や崩れかけた尊大な小塔や,とりわけ馬鹿でかい火打ちの塔の影が落ちる。黒い蔦がだんだらになったこの塔は,節くれだった石細工の拳骨の中から先を詰められた指さながら立ち上がり,天に向かって猥褻に突き出されている。夜は梟によって谺(こだま)する喉と化すが,昼は声なく佇立し,長い影を落としている。」(本書19ページ)

「時間への興味の欠如」ということでいえば,この作品,タイタスが生まれた日,一日の出来事の描写だけで110ページを費やしている。タイタスが生まれたのは夏の日だが,秋に移るまでに,さらに100ページ余り。それだけ,人物や情景の描写に力を費やしているということだが,こんな緩慢な展開,せっかちな人には耐えられないかもしれない。

だが,小生は,ファンタジーでありながらリアリティーを感じさせる,詳細な人物描写にこの物語の価値を見出す。

たとえば,伯爵の従僕,フレイは,骨ばった体格で,膝をボキボキ鳴らしながら歩く,威張りくさった,頑なな男である。料理長のスウェルターは,巨大な肉塊であり,舌足らずで饒舌な男である。『ダウントン・アビー』であれば伯爵付従者ベイツや料理長パットモアにあたるこの二人は憎しみ合っており,タイタスの命名式直前のいざこざが原因で,スウェルターはフレイの殺害を企てている。城に住む医師,プルーンスクワラーは笑い上戸で皮肉ばかり言い,失言も多い人物である。これらの奇妙な人物を手玉に取って,のし上がっていくのが稀代のマキャベリスト,スティアパイクである。スティアパイクはいわばこの物語のアンチヒーローであり,それに応じた容姿を持つ:

「少年の体は奇形の印象を与えたが,ではこの傴僂(せむし)めいた感じが何から来るものか,正確に言うのは難しかった。手足の一本一本を見ればそれなりに健全なのだが,別々のそれらを一つに足し合わせると,予想もしなかったねじくれた合計が生じるのだ。顔は粘土の如く白くて,目を除けば仮面じみている。目はと言えばひどく間が狭く,小さいうえに黒ずんだ赤ではっとするほど濃い。」(本書163ページ)

外見はこんなところだが,悪巧みと話術には長けており,台所の使用人から脱してプルーンスクワラー医師の助手になりおおせる。そして,さらにゴーメンガースト城の権力の階段を昇っていく。

美男美女善男善女は全く登場せず,むしろ奇妙な姿の問題児ばかり登場するのだが,それぞれが極めて魅力的に描かれた作品である。

ちなみに,『タイタス・グローン』は執筆当初は出版のあてがなかったものの,グレアム・グリーンの口利きで出版に至ったのだそうだ(荒俣宏の解説による)。 グレアム・グリーン,すごい慧眼。

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"cat ice"とは薄氷のこと

ネコ関連の話。

『英語歳時記』によれば,薄氷のことを"cat ice"というのだそうだ。

このように解説されている:

cat-ice 薄氷,うすらい
凍ると下の水が退いてしまうような浅いくぼみなどに張って,ネコが乗っても割れてしまう,ミルクのように白い,あるいは透明な薄い氷をいう。(『英語歳時記』 984ページ)

薄氷のことを「うすらい」とも言うとは,この本を読んで初めて知った。 典雅。

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2017.01.25

(続×7)最近のおこま嬢

うちのおこま嬢の写真であるが,ツマが上手いこと撮影したので,掲載する。

Image_d778b65_2

空前の猫ブームの中,我が家でも猫バカ度がますます高まっている今日この頃。

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2017.01.23

ドキュメンタリー映画『グレート・ミュージアム (Das Grosse Museum)』を見てきた

YCAMでドキュメンタリー映画『グレート・ミュージアム (Das Grosse Museum)』(ヨハネス・ホルツハウゼン監督,2014年)を見てきた。

『修羅雪姫』上映時ぐらい観客が多くて驚いた。これって話題の映画なんすか?

Dasgrossemuseum

ウィーン美術史美術館」の改修工事を描いたドキュメンタリー映画である。作業員が床板にツルハシを打ち込むシーンからスタートし,美術館の裏側で行われている数々の業務(運営会議,予算折衝,美術品のレイアウト作業,美術品の修復作業,オークションへの参加)を描き,オーストリア大統領を迎えてのリニューアルオープンを経て,最後にブリューゲルのバベルの塔の絵が運ばれていくシーンで終わる。

ウィーン美術史美術館はフランツ・ヨーゼフ1世の命により1872年から建設が始まり,1881年に完成した。この映画で描かれているリノベーションは2012年に行われ,2013年に再オープンした。ブリューゲルのコレクションに関して世界最大。

ハプスブルク家が収集してきた,目もくらむような収蔵品の数々に圧倒されるが,それよりも興味を引いたのが,美術館を支えるプロたちの姿。予算の配分について絵画館長と財務担当者とが火花を散らすところは見ものだ。

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2017.01.21

ヒトはかつて風だった

藤井貞和によると、昔、ヒトは肉体を持っていなかったという。

ヒトはかつて風だったのだ。

そう考えると気持ちが楽になる、と鈴木志郎康は映像詩『風を追って』の冒頭で語った。


風を追って / Run after the Wind (詩人・藤井貞和 / 言語学者・西江雅之) from nonoho55 on Vimeo.

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ヒトはかつて単弓類だった

今から三億年ほど前、地上に単弓類が現れた。ヒトを含む哺乳類の先祖である。

単弓というのは,眼窩後方に開いた「側頭窓」と呼ばれる穴の下側のアーチ状の骨のことである。後に哺乳類の耳に進化した。

二億三千万年前までは単弓類の中で最も発達した獣弓類が地上に君臨していたのだが、そのあと現れた、より機敏な恐竜たちに支配者の地位を明け渡してしまった。一億八千五百万年前のことである。

以後はトガリネズミのような形(なり)の獣弓類の子孫、哺乳類が、恐竜の目を逃れ、森林の中で昆虫を食べながら生き延びていた。暗い森の中で獲物を捕らえるためには嗅覚が発達する必要があった。このため、哺乳類の嗅覚中枢の表層に新皮質と呼ばれる新たな部位が形成された。

つまり、我々の持つ大脳新皮質は、遥か昔に暗がりの中で嗅覚を使って時空間の認識を行うために生み出されたものだった。

まあそんなことがマクローリン『イヌ』のはじめの方で語られている。


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2017.01.20

(続×6)最近のおこま嬢

今年に入ってから初の,おこま嬢の写真を掲載する。

いつも夕方から夜にかけてソファーで寝ております:

Sdsc_0546

もう,どこに顔があるんだか,すぐにはわからない。

Sdsc_0548

カメラを向けてもぐっすり眠ったまま。

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1月1日と2日の富士山

今頃,正月に撮った写真を掲載する。

小生の実家は清水にあるもんで,はぁ,富士山が良く見えるだよ。

これは1月1日の夕方に実家の犬を連れてツマとともに近所を散歩したときに撮ったもの:

Sdsc_0543

そして,翌日,ツマの実家に向かう旅の途中,新幹線の車窓から撮ったもの:

Sdsc_0545

三島駅到着直前ですね。いつもそうだが,元旦は良く晴れて富士山が良く見える。

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2017.01.16

『英語歳時記』霧の項,そしてカール・サンドバーグ

中学か高校の時,図書室で『英語歳時記』という本をパラパラとめくって読んでいた。

その本の中で,霧(fog)について書かれた一節がとても味わい深かったという印象がある。

そして幾星霜。 今頃になってAmazonで購入してみたわけである。

30数年ぶりに,霧の項を読み直してみるとこんな感じだった:

fogはmistよりも濃度の高いものをいう。イギリスはfogの多い国で,とくに11月から冬にかけては多く,ときに低く垂れこめた濃霧が1,2週間も消えないことがあり,人々の気持ちを陰うつにする…(中略)…文学でそれを描いた最も目覚ましい例は,…(中略)…Charles DickensのBleak Houseの冒頭の部分である。John GlasworthyのThe forsyte SagaでBosinney青年が自動車にひかれて死ぬのも,煤煙が混じてできる11月の霧深い夜である…(『英語歳時記』968頁)

こういう解説文のあとで,T. S. EliotやC. Sandburg(カール・サンドバーグ)の詩が引用されるのだが,どちらもfogをネコに例えている。

小生としてはサンドバーグのこの短い詩がとても良いと思った。

THE fog comes
on little cat feet.

It sits looking
over harbor and city
on silent haunches
and then moves on.

C. Sandburg: "The fog"

霧はやってくる,子猫のような足取りで。

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2017.01.09

『野良猫ロック ワイルドジャンボ』と『ツィゴイネルワイゼン』を見てきた

年明け最初の映画鑑賞。

昨年末に記事を書いたように,YCAM(山口情報芸術センター)で「藤田敏八と時代の色気」という特集をやっているので,藤田敏八の監督作品と出演作品をそれぞれ一つずつ見てきた。

Fujitatoshiya

YCAMチラシより


◆   ◆   ◆


まず一本目は藤田敏八監督作品『野良猫ロック ワイルドジャンボ』(1970年)

【あらすじ】 タキ(地井武男),ガニ新(藤竜也),デボ(前野霜一郎),ジロー(夏夕介),C子(梶芽衣子)らペリカンクラブの面々は暇を持て余していた。ある日,タキが思いを寄せる謎の女性・アサ子(范文雀)が某宗教団体の現金を強奪する計画を持ちかける。果して計画は成功するのか?

地井武男が若い若い。梶芽衣子は変なしゃべりだけどかっこいいので許す。埋立地で范文雀が乗馬しているのには苦笑せざるを得ないが,それでもお嬢様然としているので良い。マンダムのチャールズブロンソンの看板の裏に藤竜也が潜んでいるのは,日本のブロンソン気取りだろうかと思うのだが,それもご愛敬。

ストーリーは大したことはないが,俳優たちの若さ大爆発の娯楽作品。藤田敏八が青春映画の巨匠と言われていただけある。


◆   ◆   ◆


つぎに二本目。鈴木清順監督作品『ツィゴイネルワイゼン』(1980年)

前にも見たような気がするのだが,ほとんど忘れていた。まあ,映像的にはつげ義春とか寺山修司とか,その系統の感じがした。あと,山田章博の初期作品とか思い出した(『人魚變生』所収の「素描集 みづは」とか)。

青地が死んでいるとすれば,『シックス・センス』のオチのようであるが,全体の不可解な感じが一気に氷解する。ナイト・シャマランは『ツィゴイネルワイゼン』を見たんじゃないのか?というのが当家の中での結論。まあ冗談ですが。

前に見たときは俳優としての藤田敏八には注目していなかったのだが,なかなか良い俳優である。さすが日本アカデミー賞優秀助演男優賞。とはいえ,映画全体を引っ張っているのは原田芳雄の怪演。原田芳雄が本当にカッコいい。

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2017.01.05

お節介な顔認識テクノロジーに対抗する

さて,本日も英語の勉強ということで,the guardian紙のサイトを見ていたわけだが,面白そうな記事を見つけた:

"Anti-surveillance clothing aims to hide wearers from facial recognition" (by Alex Hern, the guardian, Wednesday 4 January 2017)

ベルリンを拠点として活動しているアーティスト兼技術屋のアダム・ハーヴィー(Adam Harvey)が,顔認識(顔認証)技術に抵抗する衣服を開発している,というニュースである。

このアダム・ハーヴィー,以前,「顔認識を拒否する化粧法」を開発して発表していた。その化粧法は,Wired誌でも取り上げられていた(参考)が,"CV Dazzle"というネーミングだった。

今回,ハーヴィーが提案しているのは,顔と誤認識させるテキスタイル・パターン(布地の柄)である。ガーディアン紙に写真が掲載されているので,そちらを見ていただきたいが,コンピュータがそのテキスタイル・パターンを見ると何百・何千という顔を認識してしまい,来ている人の顔を認識できなくなるというわけである。いわば,顔の飽和攻撃。

ハーヴィーがこのような対抗技術を開発している動機は,もちろんプライバシーの擁護,ということであるが,さらに言えば,人間の外観から人間の価値を決定しようとする誤った考え方への批判という意味もある。

ガーディアンの記事によれば,顔認識システムは,マーケティングから犯罪抑止まで応用されつつあるという。上海交通大学の研究者は,口や鼻の位置関係から犯罪性を見破ることができるとまで言っているという。

こういったお節介な顔認識テクノロジーはフランシス・ゴルトンらの優生学を思い起こさせる,とハーヴィーは言う。犯罪者は犯罪を実行する人々のことであって,犯罪者に見える人々のことではない,ということが忘れ去られているわけだ。


◆   ◆   ◆


ここで小生が思い出したのが,2013年9月にガーディアン紙でスラヴォイ・ジジェクが語っていたことである(参考)。本記事に関連する部分を再録してみる:

現在,大量の個人情報が国家によって収集されているが,それは膨大過ぎて情報機関のコンピュータをフル活用しても処理しきれないほどである。すると場合によってはコンピュータ・プログラムのバグによって,普通の市民がテロリストと誤認される可能性もある。なぜテロリスト判断されたのか,理由もわからずに。
"Without knowing why, without doing anything illegal, we can all be listed as potential terrorists." (Slavoj Zizek)

顔認識システムが誤った進化を遂げると,我々は何かの拍子に,犯罪者としてリストアップされ,ネット上で曝され,クレジットカードの使用を停止され,生存すらできなくなる可能性があるというわけである。

我々には認識されない自由というのも必要だろう。

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2017.01.04

トランプの年

あけましておめでとうございます。今年最初の記事です。

この年末年始は例によって小生とツマの実家を両方訪問し,移動距離の合計は2000キロを超えたものと思います。

その旅路のお供に持って行ったのが,これ,実業界最大の教養人,ライフネット生命保険の出口治明(でぐち はるあき)氏の著書,『人生を面白くする 本物の教養』であります。

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この本,目次を読むだけで全貌がわかるという親切設計。平易な文章ですが,ファクトや数字に裏付けられた説得力のある内容で,「なるほど」と納得することしきり。

この本の中で,週に一回は英字紙の記事を読みましょう,とか,未来を予測できない我々は歴史に学ぶしかない,とか書いてありましたので,それを実践するべく,自宅に戻り次第,最初にチャレンジしたのが"the guardian"紙の記事を読むこと。こういう記事を読んでみました。

"Will Donald Trump's election put America first and global conflict next?" (by Nouriel Roubini, the guardian, Tuesday 3 January 2017)

以下はその要約と感想。文体が変わります。


◆   ◆   ◆



  • ドナルド・トランプの大統領選勝利は,グローバリズムに対するポピュリストからの反撃という側面があるとともに,70年続いた"Pax Americana",つまり,アメリカと同盟国が第2次世界大戦後に築いた自由貿易と安全保障の体制の終焉の前兆という側面もある

  • トランプが本気で「アメリカ第一」主義を推し進めるのであれば,彼の政権は孤立主義,単独行動主義にシフトし,米本土のことしか考えなくなるだろう

  • 1920~30年代,米政権が同じような政策を採り,第二次世界大戦の種をまいたことを思い出すべきである

  • "Smoot-Hawley tariff"によって始まった保護貿易主義は,報復的な貿易・通貨戦争を引き起こし,大恐慌を悪化させた

  • 太平洋と大西洋に守られているという誤った認識は,日本とドイツの台頭を許した

  • いま,再び,孤立主義を採り,米本土のみに関心を寄せることは,世界各地の紛争を激化することにつながる

  • アメリカがヨーロッパへの関心を失っていない現在ですら,すでにヨーロッパでは,イギリスにおけるBrexitの決定,イタリアにおける五つ星連合の勝利,フランスにおける国民戦線の台頭,などに見られるように,分離主義が拡大している

  • アメリカがヨーロッパから撤退すれば,失地回復に燃えるロシアがヨーロッパで権勢をふるうことになる

  • トランプが国産のエネルギー開発に重点を置けば,中東への関心は薄れ,この地域を不安定化させる

  • トランプのアメリカ第一主義はサウジアラビア―イラン間の「スンニ・シーア代理戦争」を長期化させ,地域大国であるイラン,サウジアラビア,トルコ,エジプトの核武装化を促す

  • 数十年の間,米国はアジアの経済と軍事に強い影響を及ぼし,この地域を安定化させていたが,いま,中国はこの現状に挑戦しようとしている

  • オバマ政権の戦略であるTPPを破棄することは,アジア・太平洋・南米地域の経済活動の主導権を中国に譲ることとなる

  • 米国がフィリピン,韓国,台湾との同盟を破棄すれば,これらの国は中国に屈服することだろうし,日本やインドといった他の同盟国は軍事力を増強し,中国とあからさまに対決しようとするだろう

  • 保護貿易主義と孤立主義は,1930年代と同様に世界経済の成長を妨げ,世界秩序への挑戦者たちを勇気づけてしまうことだろう

  • トランプは,米国が太平洋と大西洋によって守られており,中国やロシアやイランといった野心的な国々から直接の脅威を受けないと思っているかもしれない

  • しかし,米国はすでに複雑に入り組んだ経済・軍事の国際的なネットワークの中に存在しているわけで,野心的な国々が保有する核兵器やサイバー兵器などによって,ある日突然,米国本土が脅かされないとも限らない

  • 歴史の示すところは明らかだ: 保護貿易主義,孤立主義,「アメリカ第一」主義は経済的・軍事的災厄のもとである


◆   ◆   ◆


Nouriel Roubiniはニューヨーク市立大学スターン・スクール・オブ・ビジネスの教授。クリントン政権,IMF,連邦準備制度理事会,世界銀行などで働いた経験を持っているとのこと。

良くまとまった論説だが,「今の状況は大戦前と似ている」というのはよく聞く話である。

第二次世界大戦前夜の状況から学ぶべきものは多いが,プレーヤーの多さ,国際関係の複雑さは大戦前夜と現在とでは比べ物にならないほどであるから,「経済的・軍事的災厄」と言ってもそれは大戦後と全く違うものになっているであろうと思われる。

気を付けなくてはならないのが,"Pax Americana"を是とする者にとっての「経済的・軍事的災厄」は,他の者にとっては「経済的・軍事的災厄」とはならないかもしれないという点である。だからこそ現在の秩序に対する挑戦者が登場するわけで。

そういえば,およそ10年前に別宮暖朗の『軍事学入門』を読んだ(参考)が,そこでは「平和とは現状維持である」ということが書いてあった。そういうことであれば,平和を希求する場合には"Pax Americana"を認めなくてはならない,ということになるのだろう。

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