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2016.11.27

藤井貞和『日本文法体系』を読む

大変な本が出ちゃったなぁ,というのが,日曜言語学者たる小生の感想。

現代日本語文法というと,Wikipediaの記述にもあるように,橋本文法をはじめ,山田文法,松下文法,時枝文法といった4大文法が知られているが,藤井貞和の日本語文法は,日本語文法を成り立ちから見直すという点で他の文法とは大きく異なったアプローチを取っている。

日本文法体系 ((ちくま新書 1221))日本文法体系 ((ちくま新書 1221))
藤井 貞和

筑摩書房 2016-11-08
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用例の多くは記紀,万葉集,源氏物語から取られているため,「じゃあ現代日本語文法じゃなくて,古文の文法じゃないか」,と言われそうである。しかし,この本が狙っているのは,現代の文法の足踏み状態を脱するべく,源流から文法を見直し,作り直すことにある。例えば,「き」,「けり」,「ぬ」,「つ」等々,過去に関わる助動辞(助動詞)についての考察に始まり,「たり」が現代日本語の「た」になるまでの大いなる流れについて詳しく述べている(この話は別記事で取り上げる)。小生の乏しい言語学の知識からすれば,ソシュール的ではなく,コセリウ的と言えようか?


◆   ◆   ◆


この本の尋常ならざるところは今後,本ブログの中であれこれ取り上げようと思うが,今回ちょっとだけ触れておきたいのが,時間・推量・形容の助動辞(本書では助動<詞>ではなく,助動<辞>と呼ぶ)の整理の仕方である。

著者は過去を表す「き」,現在を表す「り」,形容を表す「し」,推量を表す「む」の4つを取り上げ,次のような四面体,通称krsm立体(四面体)を作り上げている。

Krsm1

そして,これら4つの頂点同士を結ぶ辺の上に新たに組み合わせられた助動辞が生まれることを示している。

たとえば,下の図の赤い辺に着目していただきたい。「き」(過去)と「む(あむ)」(推量)との合成によって,「けむ」という過去推量の助動辞が生まれるのである。

Krsm2

また同じ図で,「き」と「り(あり)」(現在)との合成によって,「けり」という過去から現在に至る有様を描く助動辞が生まれる。

ここで,「き+あむ」が「けむ」になったり,「き+あり」が「けり」になったりするのは,"i + a -> e"という母音同士の合成に関する法則が想定されているからである。

当然他の組み合わせもあり,本書に出てくる時間・推量・形容の助動辞群をまとめると次の図のようになる:

Krsm3

このように時間・推量・形容の助動辞群はでたらめに存在しているのではなく,互いに関連し合って存在しているということをこのkrsm立体は示している。ここら辺は構造主義のようだ。

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