本当は怖い『キーツ詩集』
相変わらず,だらだらと中村健二訳『キーツ詩集』を読んでいる。
税別1140円で何日も楽しめるんだから,コストパフォーマンスは極めて高い。
キーツ詩集 (岩波文庫) 中村 健二 岩波書店 2016-08-18 売り上げランキング : 134638 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
さて,表題の「本当は怖い」とはどういうことか?
『キーツ詩集』は詩集3つ分,すなわち『1817年詩集』と『レイミア,イザベラ,聖アグネス祭の前夜,その他の詩』と『拾遺詩集』とで構成されている。
このうち,『レイミア,イザベラ,聖アグネス祭の前夜,その他の詩』には長編の詩4つと短い詩(オード)9つが収められている。
その長編の詩の一つ,「イザベラ,またはバジルの鉢」が狂気を孕んだ悲恋を描いていてとても怖い。ホラー小説である。
ボッカチオ『デカメロン』の第4日目第5話をもとにした物語詩である。あらすじはこんな感じ:
フィレンツェの富豪の娘・イザベラと奉公人ロレンゾは相思相愛だった。これを快く思わないイザベラの二人の兄は,ロレンゾを連れ出し,森で殺害した。
ある夜,ロレンゾの亡霊がイザベラの枕元に立った。亡霊の導きによって,イザベラは森の中にうずもれたロレンゾの遺体を探り当てた。そして,イザベラはロレンゾの首を切り取って……。
やはりここから先は『キーツ詩集』を読んでいただきたい。
料理に使われているバジルを見るたびに,この話を思い出すこと間違いなし。
「なんてひどい,あたしからバジルの鉢を盗んでいくなんて」 ("O cruelty, To steal my Basil-pot away from me!")
というイザベラの叫びがいつまでも頭にこだまする。
デカメロン ボッカッチョ 平川 祐弘 河出書房新社 2012-10-11 売り上げランキング : 309863 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 小池正就『中国のデジタルイノベーション』を読む(2025.01.06)
- 紀蔚然『台北プライベートアイ』を読む(2024.09.20)
- 『ワープする宇宙』|松岡正剛に導かれて読んだ本(2024.08.23)
- Azureの勉強をする本(2024.07.11)
- 『<学知史>から近現代を問い直す』所収の「オカルト史研究」を読む(2024.05.23)
コメント