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2016.10.19

本当は怖い『キーツ詩集』

相変わらず,だらだらと中村健二訳『キーツ詩集』を読んでいる。

税別1140円で何日も楽しめるんだから,コストパフォーマンスは極めて高い。

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中村 健二

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さて,表題の「本当は怖い」とはどういうことか?

『キーツ詩集』は詩集3つ分,すなわち『1817年詩集』『レイミア,イザベラ,聖アグネス祭の前夜,その他の詩』『拾遺詩集』とで構成されている。

このうち,『レイミア,イザベラ,聖アグネス祭の前夜,その他の詩』には長編の詩4つと短い詩(オード)9つが収められている。

その長編の詩の一つ,「イザベラ,またはバジルの鉢」が狂気を孕んだ悲恋を描いていてとても怖い。ホラー小説である。

ボッカチオ『デカメロン』の第4日目第5話をもとにした物語詩である。あらすじはこんな感じ:

フィレンツェの富豪の娘・イザベラと奉公人ロレンゾは相思相愛だった。これを快く思わないイザベラの二人の兄は,ロレンゾを連れ出し,森で殺害した。

ある夜,ロレンゾの亡霊がイザベラの枕元に立った。亡霊の導きによって,イザベラは森の中にうずもれたロレンゾの遺体を探り当てた。そして,イザベラはロレンゾの首を切り取って……。

やはりここから先は『キーツ詩集』を読んでいただきたい。

料理に使われているバジルを見るたびに,この話を思い出すこと間違いなし。

「なんてひどい,あたしからバジルの鉢を盗んでいくなんて」 ("O cruelty, To steal my Basil-pot away from me!")

というイザベラの叫びがいつまでも頭にこだまする。


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