(続)『キーツ詩集』を読む
ロマン派と言っても,星菫派(参考)ではないんだなぁ,というのが『キーツ詩集』に収められたいくつかの詩を読んだ感想。
中村健二訳による「希望によせて」の一節(『キーツ詩集』63頁):
決して見たくない――愛国者の高価な遺産,
高貴な<自由>(平服を着ても何と高貴なことか!)が
卑しい紫衣の廷臣どもに虐げられ,
平身低頭,ついには気息奄々となるさまを。
大空を銀色の燦きで埋めつくす
翼にのって,きみが天から舞い降りる姿を見たい
原文では:
Let me not see the patriot's high bequest,
Great Liberty! how great in plain attire!
With the base purple of a court oppress'd,
Bowing her head, and ready to expire:
But let me see thee stoop from heaven on wings
That fill the skies with silver glitterings!
また,ソネットの一つ,「リー・ハント氏が出獄した日に」もわりと骨太の内容である:
親切にも,自惚れた貴人に真実を教えたために,ハントは
監獄に押し込められた。だからどうだというのだ。
不滅の精神の持ち主らしく,彼は獄にいても天空を
目指す雲雀のように自由で,上機嫌だった。
権力の手先よ,彼が漫然とその日を待っていたと思うか。
彼がただ監獄の塀だけを見ていたと思うか。
おまえがしぶしぶ獄門の鍵を開けるまで?
原文では:
What though, for showing truth to flatter'd state
Kind Hunt was shut in prison, yet has he,
In his immortal spirit, been as free
As the sky-searching lark, and as elate.
Minion of grandeur! think you he did wait?
Think you he nought but prison walls did see,
Till, so unwilling, thou unturn'dst the key?
「自由」がよく出てくるが,訳者・中村健二による解説記事を読めば,これらの詩が収められた『1817年詩集』の表向きの主題が「自由」だったとのことである。納得。
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