「第4次産業革命」でいいのか?
今は第4次産業革命の真っ最中なのだそうだ。
なぜ第4次なのかというと:
- 第1次は18世紀後半の工業化
- 第2次は19世紀後半の大量生産開始
- 第3次は20世紀後半の電子化
と産業革命が続いており,現在はICT技術によって産業が飛躍的に発達している。これを以て第4次と名付けているわけである。
だが,ジョゼフ・ギースとフランシス・ギースによって書かれた『大聖堂・静鉄・水車』 というヨーロッパ中世のテクノロジーについて書かれた本を読むと,「ちょっと待ちんさい!」と思ってしまう。
大聖堂・製鉄・水車―中世ヨーロッパのテクノロジー (講談社学術文庫) ジョゼフ・ギース フランシス・ギース 栗原 泉 講談社 2012-12-11 売り上げランキング : 121266 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この本の第1章では,上に挙げた以外にも数々の産業革命(テクノロジー革命と呼んでいる)が起こっていることが指摘されている。
例えば,人類が道具を発明したこと自体が,第1の産業革命なのである。そして,新石器時代に起こった狩猟・採集から作物栽培への転換は第2の産業革命,メソポタミア・ナイル・インダス・黄河等で起こった灌漑農業は第3の産業革命。そして,本書で取り上げられている,ヨーロッパ中世のゆっくりとした長期にわたる技術開発は第4の産業革命というわけである。
つまり,これらの産業革命を加えれば,我々は最低でも8度目の産業革命を目の当たりにしているということになる。
産業革命については別の見方もある。制御系に着目した見方だ。手動・人動であった道具が電化されたのが第1次産業革命で,電化製品が人工知能など高度な情報処理を行うようになった,つまり知能化されたのが第2次産業革命だ,というとらえ方である。
まあ,現時点では常識としては「第4次産業革命」というバズワードを知っておくべきだろうが,他の数え方もあるということは頭の片隅に置いておいた方が良いだろう。
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