『科学社会学の理論』を読んで思ったこと(続)
松本三和夫『科学社会学の理論』 (講談社学術文庫)は今年の3月10日に出た本である。1998年に木鐸社から刊行された『科学技術社会学の理論』を原本としたものである。
20年近くを閲しているが,地球環境問題や原発問題など,今日においても重要な科学技術と社会の間の問題を具体的な分析事例として取り扱っており,全く古さを感じさせない。今回版を改めて刊行された日付が,3.11の前日だというあたり,偶然ではなくなんらかの意図を感じる。
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本書は科学社会学を構成する3つの論議,内部構造論,制度化論,相互作用論に関して,それらの主流の学説を批判的に解説し,適用限界を明らかにしており,教科書的な役割を担っている。
だが,この本が異彩を放つのは,科学社会学のあり方(そして社会学全体のあり方,さらには科学技術と社会の関係)を内部から変えていこうとする「自己言及・自己組織型科学社会学」を提案している点にあり,科学社会学以外の学問分野に属するものにとっても刺激的な内容である。
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