« 「すべからく武人は死せ」 | トップページ | ラファエル前派展「英国の夢」を見てきた »

2016.05.03

『スポットライト 世紀のスクープ』を見てきた

広島の八丁座でツマとともに『スポットライト 世紀のスクープ』(2015年アカデミー賞作品賞・脚本賞受賞)を見てきた。

カトリック教会の性的虐待事件」をアメリカ合衆国で初めてスクープ(2002年1月)したボストン・グローブ紙「スポットライト」取材チームを描いた作品。

日本国内のジャーナリストからの評価も高い,実話に基づいた完成度の高い作品であるが,すっきりしない点があったので二点だけ触れておく。


システムの問題が未解決のまま

――司祭や枢機卿個人を糾弾するだけではダメだ。教会のシステムを糾弾しなくては,この問題は繰り返される!!――

というのが取材チームのリーダー,ウォルター"ロビー"ロビンソン(マイケル・キートン)の主張だったはずである。

しかし,Wikipediaの記事「カトリック教会の性的虐待事件」を読んだらわかるように,

「職場を追われた神父らが,メディアなどの監視が行き届かない南米など発展途上国で同様に聖職に就き,同様の事件を起こしていることがわかり,新たな問題になっている」(Wikipedai記事より)

という有様で,教会のシステムは現在もなお問題を抱えたままである。

情報減である「サイプ」が指摘したように,聖職者の独身制と性的虐待との間に相関(因果関係かどうかは議論の余地があると思う)が見られるのであれば,聖職者の独身制というカトリックの伝統に踏み込まなくてはならないだろうが,そこまで至っていない。

ちなみに正教会やプロテスタントでは聖職者の妻帯についてはカトリックと異なった制度を採っている。

もちろん,ボストン・グローブ紙の記事によって教会のシステムに関する問題が持ち上がったこと自体は十分に評価されるべきであるが。


ゲーガン神父のその後

ボストン・グローブ紙「スポットライト」取材チームが特に注目したのはボストン司教区の司祭ジョン・ゲーガン神父による30年間・延べ130人の児童に対する性的虐待であった(もちろん問題があったのはゲーガン神父一人ではない。ボストンでは計87名もの神父が性的虐待事件を引き起こしていた)。

この映画ではゲーガン神父のその後を描いていないが,同神父は2002年に禁固刑の実刑判決を受けた。ゲーガン神父はマサチューセッツ州のマサチューセッツ州マサチューセッツ州ソーザ・バラノフスキ矯正センターに収容されたものの,2003年8月23日に同房のJoseph Druceによって殺害された。首を絞められ,死ぬまで踏みつけられたという(以上Wikipedia英語版"John Geoghan"より)。享年68。

ゲーガン神父の件は本作のキープロットの一つであるが,スクープ後の話がフォローされていないのはちょっとどうかなーと思った。作品としての完成度を上げようとすれば蛇足になるとは思うが。

|

« 「すべからく武人は死せ」 | トップページ | ラファエル前派展「英国の夢」を見てきた »

映画・テレビ・芸能・アイドル」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/44485/63575953

この記事へのトラックバック一覧です: 『スポットライト 世紀のスクープ』を見てきた:

« 「すべからく武人は死せ」 | トップページ | ラファエル前派展「英国の夢」を見てきた »