読書を投資とみなす考え方
ちょっと前に話題になったのが"The Observer"の「年間100冊を読破するための方法 (How to Read 100 Books a Year)」という記事。
抜粋して和訳したものがinfoseekなどで「読書は最高の「自己投資」。忙しくても1年に100冊の本を読む5つのコツ」という記事となって公開されている。
- 1時間に50ページ読む
- 通勤中/食事中/仕事の合間等に時間を割いて1週間に10時間は読書の時間をつくる
こうすれば
(52週/年)×(10時間/週)×(50ページ/時間)÷(250ページ/冊)=104冊
ということで,1年に100冊以上は読めるという。
まあ,それはわかるが,無理しないでも1週間に1冊ぐらいなら読める。普通に読書する人であれば,年に50冊ぐらいは読んでいることだろう。
それよりむしろ読書を投資とみなす考え方がちょっと気になる。
そこで少し思い出したのが今月の"WIRED"日本語版の編集長の言葉である:
「人材」,「資源」,「開発」,「投資」といった経済用語をもって人を語ることにますます慣れていく世の中に,いい加減辟易していたはずだった。それは,文化的,社会的なあらゆるものごとを商品化し,市場経済内の言葉と指標で評価し,それでもって評価できないものはないものとしようとする(なぜか加速している)趨勢と呼応しあって,ますます反感を募らせる。(若林恵 『WIRED』日本語版編集長)
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読書に関して「投資」という言葉を使うのは人々を読書にいざなうための方便なのだろうと思う。
仕事のための読書というのものはあるが,読書の本質は,見返りを求めない,読書体験そのものにある。
読書は強制されないがゆえに素晴らしい。
読書は何か見返りを求めていないがゆえに素晴らしい。
音楽や絵画や映画の観賞と同じものが読書にはある。
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コメント
同感です。読書はそれ自体が目的であって手段ではない。
とはいえ、そう見栄を切っても販売促進にならない世の中なわけでいやはや世知辛いものですね。
それにしても世間で自己投資という場合の自己とはどのようなものなのでしょうかね。人それぞれ人生設計はあるのでしょうが、現世での投資を来世で回収することが(たぶん)できない以上時間との戦いとなります。これはやはりしんどいですよね。。
投稿: 拾伍谷 | 2016.02.16 11:01