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2015.12.28

いま,蘇我氏がアツい

この年末になって,急に新書界にブームを巻き起こしているのが,「蘇我氏」である。

現在読書中の本がこれ,吉村武彦『蘇我氏の古代』である。

蘇我氏の古代 (岩波新書)蘇我氏の古代 (岩波新書)
吉村 武彦

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この本の特色は,なかなか本題,つまり蘇我氏の話に入らないことである。

第1章「氏の誕生」では「氏」の成立にいたる背景が丁寧に語られている。とくに古代の職能集団の組織化の歴史,つまり,五世紀の「人制」,六世紀の「部民制」,八世紀の「品部・雑戸制」というような制度の変遷については今回初めて知ったところである。

第2章「蘇我氏の登場」に入って,ようやく蘇我氏の話が出てくると思いきや,蘇我氏より前に勢力のあった葛城氏に関する話が始まる。ここで蘇我氏と葛城氏の関係が明らかになり,ついに蘇我氏の話に入るわけである。


◆   ◆   ◆


蘇我氏については,ロマンあふれる渡来人説というのが昔からあった。

昔よく読んでいた豊田有恒の古代史SFでは必ずと言っていいほど「蘇我氏=百済の朴氏」という説を採っていた(百済の高官・木満致<もくまち>と蘇我満智<まち>を同一人物とする説)。

本書でもこの説に一節を割いて検討しているが,

諸事情を考え合わせると,蘇我氏が,韓の地や高句麗から来た移住民ということは考えにくい。(61ページ)

と,渡来人説を一蹴している。


◆   ◆   ◆


当初は蘇我氏のことを知りたくて本書を読んだわけだが,他の豪族の話も面白い。とくに豪族と天皇家の縁戚関係。

本書の84ページには応神天皇以来の天皇の母とその出自に関する表(表2-3)が掲載されているのだが,これを見ると,当時の有力氏族の変遷が分かって興味深い。同表では応神天皇から欽明天皇までが記述されているのだが,小生はこれを大化の改新の立役者,天智天皇(中大兄皇子)まで拡大したものを作ってみた。

天皇母の地位母の出自
応神気長足姫仲哀皇后皇親
仁徳仲姫応神皇后
履中磐之媛仁徳皇后葛城氏
反正
允恭
安康忍坂大中姫允恭皇后皇親
雄略
清寧韓媛雄略妃葛城氏
顕宗荑媛継体妃
仁賢
武烈春日大娘仁賢皇后内親王
継体振媛彦主人王妃垂仁7世孫
安閑目子媛継体妃尾張氏
宣化
欽明手白香皇女継体皇后内親王
敏達石姫皇女欽明皇后
用明堅塩媛欽明妃蘇我氏
崇峻小姉君
推古堅塩媛
舒明糠手姫皇女押坂彦人大兄皇子妃内親王
皇極/斉明吉備姫王茅渟王妃皇親
孝徳
天智皇極天皇天皇/舒明皇后

これを見ると,蘇我氏は欽明朝で地位を確立し,王権への介入を深めていったということがわかる。

著者の吉村武彦先生の言い方では,当時の当主・蘇我稲目が,葛城氏・尾張氏といった先例を踏襲するのみならず,意識的に「身内入り」を強めていったということになるだろう。

本書と同じタイミングで上梓されているのが倉本一宏『蘇我氏―古代豪族の興亡』である。これを読むのはこれから。両方読んで古代氏に強くならねば。

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いま,蘇我氏がアツい。

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