近藤ようこ『水鏡奇譚』を読む
先月,ちくま文庫に入った,近藤ようこ『水鏡奇譚』を読んだ。
山の狼と行者に育てられた少年ワタルと記憶喪失の美少女・鏡子(かがみこ)との旅の物語。
数々の妖異に巡り会い,困難を乗り越えながら旅をつづける二人。鏡子の家にたどり着くのが目的だが,家にたどり着けば,二人は離れ離れになる。
健気な少年少女の切ない物語である。
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南伸坊曰く
「素晴らしい。キュートでエロティックで,懐かしい」
髙橋留美子曰く
「水鏡奇譚は,長年忘れがたい未完の物語であった。旅が終わった今,この物語は愛しい泉の如く,心にあり続ける」
小生はグダグダと感想を書くつもりはない。このお二方の言葉だけで十分この作品の魅力は伝わるはずだ。
今回のちくま文庫で三回目の出版となるが,文庫版には初出など書誌情報が欠けているのが残念である。
この作品は最初,1988年4月から1991年4月にかけてASUKAという雑誌に連載された。11話に至ったところで打ち切り。角川書店から上下巻の単行本として出版された。それが最初の出版であるが,髙橋留美子が言っているように,未完の作品となっていた。
その後,第12話と最終話第13話が書き加えられた完全版が,2004年5月に青林工藝舎から出版された。それが2度目の出版。実は上に引用した髙橋留美子の言葉はその際に寄せられたものである。髙橋留美子は近藤ようこの高校(新潟県立新潟中央高等学校)の同級生である。
そして,今回,その青林工藝舎版/完全版がちくま文庫に収められた。
詳しい書誌情報は近藤ようこのファンがまとめているのでそれを見ていただきたい:
「近藤ようこファンサイト」
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