近藤ようこ『死者の書』出た!
近藤ようこが折口信夫の『死者の書』に挑戦しているのである。
このたび,ビームコミックスから上巻が上梓された。
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この作品は折口信夫の『死者の書』をそのまま漫画化したものではなく,大胆に再構成したものである。
原作の物語の構造については以前,本ブログ記事「折口信夫(おりくち・しのぶ)『死者の書』を読む」の中で簡単に触れた。原作は滋賀津彦(大津皇子)の物語と藤原南家郎女(中将姫)の物語とが交錯する二重構造となっていた。そして滋賀津彦(大津皇子)の躯が目覚めるところから話が始まっていた。
これに対し,近藤ようこ作品では藤原南家の郎女が最初から登場し,明確に物語の中心となっている。難解だと言われている『死者の書』の世界がかなりすっきりした形で再現されているのである。
月刊コミックビーム2015年1月号で近藤ようこによる『死者の書』の連載が始まったとき,なぜだか「ついに!」と思った。
近藤ようこは以前にも『説教 小栗判官』や『妖霊星―身毒丸の物語』など説教節を題材とした作品を発表していた。折口信夫もまた説教節を「唱導文学」と呼び,研究するだけでなくこれを題材とした短編小説も発表しているほど造詣が深かった。
近藤ようこと折口信夫。両者の作品世界はすでに重なり合い,交錯していた。近藤ようこによって『死者の書』が描かれるのは時間の問題だったのだろう。
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コメント
近藤さんの折口物はどれも素晴らしい作品ばかりですが「死者の書」についてはこれまで手掛けるのを慎重に避けてきたような印象を持っておりました。それだけに括目しております。
投稿: 拾伍谷 | 2015.09.06 00:29