文藝春秋9月号で『火花』読んだ
ラオス渡航前にツマに頼んで文藝春秋2015年9月号を買っておいてもらった。
芥川賞2作品が掲載されているからである。
以前,田中慎弥と円城塔が受賞した時(第146回)もそうだったし(参照), 西村賢太&朝吹真理子が受賞した時(第144回)もそうだったのだが,うちでは面白そうな作品が芥川賞を受賞した時には,それが掲載されている文藝春秋を購入し,夫婦して読んでみるのが慣例化している。文藝春秋の罠にまんまと嵌っている。
帰国後,まず又吉直樹の『火花』を読んだ。
併せて芥川賞選評も読んだ。
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他の人々がいい書評を書いているので,いまさら小生が何か書く必要はないと思う。とはいえ,簡単に感想を述べてみる。
まず,何よりも読んでいて面白いというのがいい。
そして,田中慎弥の『共食い』の尖がった感じや西村賢太の『苦役列車』の重厚感も良いのだが,『火花』のユーモアと真剣さと焦燥感と絶望感と解放感とがごちゃごちゃになった複雑な感じも良い。
叙述には少しばかり文学臭を感じるが,それはむしろちょうどいいぐらいの文学臭であって,山田詠美が選評で述べていたように「ウェル・ダン」,「読み頃」である。山田詠美が「泣けて来たよ」と評したくだり,
「劇場の歴史分の笑い声が,この薄汚れた壁には吸収されていて,お客さんが笑うと,壁も一緒になって笑うのだ」
このくだりは宮本輝が選評で述べていた又吉直樹の「ひたむきさ」を最も感じさせる部分でもある。珠玉の一文。
それにしてもこんないい小説を書いてしまって,次,どんなのを書くんだろうと心配と期待とが小生の心の中に渦巻いている。
まあ,又吉直樹には,自由律俳句で発揮しているような,人生の一コマを鋭くうまく切り取る能力が備わっているので,その心配は杞憂に終わるとは思うけどね。
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