関西の二つの顔:凋落と栄光と,安藤忠雄と又吉直樹と
昨日は対照的な2つの関西人の顔を見た。
一つは芥川賞を獲得したピース又吉直樹の喜びの顔。
そしてもう一つは絵にかいたような凋落ぶりを見せた安藤忠雄の顔である。
「又吉『次回作、恥をかいても書こうと』/一問一答」(日刊スポーツ,2015年7月17日)
「<新国立競技場>安藤忠雄氏は「ラグビーW杯」と「森喜朗古墳」の関係をどう考える?」(弁護士ドットコムNews,2015年7月16日)
ピース又吉氏の受賞に関しては,出版業界からの話題提供,ビジネス的な側面も感じられなくはない。だが,同氏の『火花』は一票差で三島賞に届かなかった作品であり,受賞の可能性は十分にあったと思われる。
ちなみに『火花』は今現在,アマゾン売上ランキング1位である。うちの近所の宮脇書店にも山積みになること請け合い。
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慶事についてはこの辺にして,凶事について述べてみよう。時代の寵児だった人物がここまで零落したか,という話である。
今から数十年前,小生の母校では安藤忠雄氏が非常勤講師として教鞭を執っておられた。残念ながら,小生が入学した時,安藤氏は既に非常勤講師を辞めておられ,残念ながら謦咳に接する機会を得ることはできなかった。しかし,先輩方から伝え聞くところでは,当時の代表作の一つ,「住吉の長屋」に招かれての講義は感動ものだったとのこと。
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ちなみに安藤忠雄氏の講義を拝聴することは叶わなかったが,別の伝説的な建築家であり,安藤氏の「住吉の長屋」に影響を与えた「塔の家」の作者である故東孝光先生に直接学ぶことができたのは幸いであったと言える。
話を元に戻すが,小生の周りには安藤氏の信奉者が多く,設計演習では安藤氏の作品を手本として取り組む者もいた。どいつもこいつも「打放しコンクリート」。さらには安藤氏が若かりし頃,世界を放浪していたのを真似てユーラシア放浪の旅に出た奴もいた。
小生が入学した年には大阪府茨木市に「光の教会」が竣工し,建築系の学生の多くにいい意味でのショックを与えていた。
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小生は学生時代に東大阪の鴻池新田に住んでいたのだが,鴻池新田駅の近くには安藤氏の母校・城東工科高等学校(当時は城東工業高等学校)があり,会ったこともない安藤氏をなんだか身近に感じていた。
まあともかく,小生の学生時代,安藤氏はスターだったのである。
それが1990年代から大規模施設を手掛けるようになり,そしてマスコミへの露出が多くなったころから何となく変な感じになってきた。
「こんなに凄い建築家なのに,大阪弁丸出しのおもろいおっちゃん」
「高卒やけど世界に誇る天才建築家」
マスコミがそんなイメージを形成し,安藤氏もそれに便乗して自ら進んで演じてみせるという小芝居が鼻につくようになってきた。大阪人特有のサービスであろうか?
「森喜朗古墳」もとい「新国立競技場」の問題についての安藤忠雄氏の記者会見をテレビで見た。相当重要な問題であるにもかかわらず,軽妙な受け答えをする安藤氏。事の重大さが理解できていないのか,虚勢か,マスコミへのサービスか。
体調が良くないのを押して上京し,いつもであればスタイリッシュに決めたであろう髪型もふり乱し,白髪を染めるのも忘れたような態で,さらにいつものスタンドカラーのシャツではなく,地味なワイシャツを着て会見に臨んだ様子を見ると,この問題の重大さを認識しているようではある。
しかし,話す内容は責任の回避に終始し,磯崎新がああ言ったこう言ったと自分の言葉では説明しないあたり,問題の重大さを認識する一方で当事者意識には欠けているような印象を受けた。
危機に瀕したときの態度で人の評価は定まる。漫談のような調子で責任回避を図る安藤忠雄氏は恰好悪かった。マスコミに祭り上げられた建築家が今,マスコミによって葬り去られつつある。先生,晩節を汚しましたね。
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