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2015.04.29

真っ先に最良の本を読め―ソロー

露文読解1日目午後の部。

例によって『ロシア語一日一善』から2つ目の文章を訳してみる。

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Читайте прежде всего лучшие книги, а то вы и совсем не успеете прочесть их.
  • <<прежде всего>>は「まず第一に」という熟語
  • <<лучший>>は「良い」の最上級
  • <<а то>> は「さもないと」という熟語
  • <<успеть+完了体>>で「~する時間がある」の意味
  • <<прочесть>>は読む=<<Читать>>の完了体。ロシア語は動詞に不完了体とか完了体とかあって面倒である

以上を踏まえて露文和訳すると:

「真っ先に最良の本を読みなさい。さもないとそういった最良の本を読む時間が全く無くなります」

『森の生活』を書いたソローの言葉をトルストイが採取したもの。

ソローの原文はこう:

Read the best books first, or you may not have a chance to read them at all.

露文和訳はあまりやり過ぎても単語や文法を忘れるだけなので,今日はここまで。

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ロシア語再々・・・々入門

最近朝日新聞でプーチンの半生に関する連載記事があり,とても面白い。

それに刺激を受けて現在,ロシア語の勉強を再開することにした。

とは言っても,日常会話の練習とか,文法の再勉強とかはちょっと興味が無いので,短文読解に集中することにした。

ちょうどいい本としてこういう本がある:

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トルストイがまとめた<<КРУГ ЧТЕНИЯ>> (読書の輪)という「声に出して読みたい日本語」のロシア語版みたいな文章集があるのだが,その中から選んだ500の短文と和訳と文法説明がまとめらているのがこの『ロシア語一日一善』である。

この中から一日,一文ずつを読んでみようというのが小生の企みである。三日坊主で終わる可能性は大きい。

さっそく1文目。

Лучше знать немного истинно хорошего и нужного, чем много посретственного и ненужного.
  • лучшеはхороший(形容詞:良い)とかхорошо(副詞:良く)の比較級。これ覚えるだけで挫折しそう。<<лучше …, чем …>>で「~より~の方が良い」という意味になるそうだ
  • много(たくさん)もнемного(少し)も,後続の名詞は生格をとる
  • истинноは副詞「本当に」。関連して,истинаは真実,истинныйは形容詞「本当の」
  • хорошегоは抽象名詞хорошее(良いもの)の生格。抽象名詞は形容詞の中性形から作られる

こうした文法規則を踏まえて露文を和訳してみる。

「平凡なことや不必要なことをたくさん知っているよりも,本当に良いことや必要なことを少し知っている方が良い」


ちなみに今回,キリル文字を使うために,「ロシアンぴろしき」の「ローマ字キリル文字変換」を使わせていただいた。記して謝意を表する。

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2015.04.26

ネパール大地震:ブータンには被害なし

ネパール大地震の件。

ネパールの首都カトマンドゥからブータンの首都ティンプーまで425キロも離れているとはいえ,ブータンにもなんらかの被害があったのではないかと勝手に懸念していた。

しかし,ブータンの英字紙"Kuensel Online"をのぞいてみたところ,とくに被害は無いようである:

"No reports of damage or injuries so far: Government" (Kuensel Online, 25 April 2015)

同記事によれば,ブータン国内では今のところ,被害なし。カトマンドゥの南アジア地域協力連合(SAARC)本部,ドゥルックエアー事務所,タシエアー事務所で働いているブータン人も無事。そのほか,カトマンドゥで働いている,あるいは訪問中のブータン人も無事とのこと。

ブータン王国首相ツェリン・トブゲはネパール首相コイララに対し,ブータン国民と政府を代表して哀悼の意を表明しているとのことである。

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2015.04.25

ネパール大地震:エベレストのベースキャンプ群壊滅

インドネシアにおりますが,ネパールで大地震が発生したことに驚いております。なにしろ,近いうちにネパール支援の仕事をすることになっていたので。

The Guardian紙によれば,カトマンドゥがえらいことになっており,何百もの人が死んでいるという情報がはいっております:

"Nepal earthquake: hundreds of people dead - live updates" (the guardian, 25 April, 2015)

ここ80年来最大の被害とのこと。耐震性のない,煉瓦造の建築ばかりだったのが被害を拡大した原因のようで。

注目すべきことはこの地震によってエベレストでも雪崩が発生したということ。

上述の記事の下の方(14:19の項)を見たらわかりますが,ベースキャンプが雪や岩石によって押しつぶされています。相当な被害が出ているのではないでしょうか。

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2015.04.23

アジア・アフリカ会議(通称バンドン会議)60周年:バンドンにおります

もう何度目か忘れたものの,またバンドンにおります。

アジア・アフリカ会議(通称バンドン会議)60周年記念ということで・・・というのは嘘で,別件でたまたまこの時期にいるというだけ。

それにしても22日の晩に宇部を飛び立ち,羽田経由シンガポール経由で翌23日(本日)の午前10時にはバンドンに到着,そしてそのままお仕事に突入・・・って,小生もタフだと思います。

明日24日に世界各地の要人がバンドンに来るという話で,片田舎のバンドンの空港も盛り上がっております。現代史の英雄たちの肖像が描かれた横断幕が,いつもは殺風景な空港の建物を飾っております。

Bandung2015042301

Bandung2015042302

明日24日のバンドンは要人警備のため交通規制があり,全市がお休みとなるとのこと。

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2015.04.22

超大作『覇記』167話更新

4月13日,かの超大作Webコミック『覇記』が更新されていた。今度は167話。

西暦2043年5月,「天津神」の大軍が宮城県に上陸を開始した。これまで伏線的に反京都勢力に手を貸していた天津神たちがついに全貌を明らかにしたようである。天津神と同盟する仙台王(独眼竜)貞山青葉は,京都政府の先鋒・東雲三県知事と激突するのか?

それにしても天津神の末の皇子の名が「トシオ」というのは・・・。

楚漢戦争『カンニング・スタンツ』はと言えば,今のところ更新なし。まあ,急かしちゃいかん。

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2015.04.21

アンドレ・バザン『映画とは何か』(上)を読む

アンドレ・バザンの『映画とは何か』の上巻を読んでいる。ここに収められているのは20代後半から30代後半に至る10年程度の間にバザンが書いた映画に関する論考15編である。

バザンは1918年生まれで1958年には亡くなっている。バザンが活躍している時代はそれほど長くないから,ここに収められている論考は,バザンの全生涯の仕事の最も重要な部分が全て押さえられているものと考えてよいだろう。

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フランスの思想家の著作を読むときと同様に,気取っておりペダンチックで思わせぶりな文章に,読者は面喰うかも知れない。しかし多少の集中力さえあれば,映画に対する認識を一変させるような,バザンの主張に触れることができる。

例えば,上巻の巻頭を飾る「写真映像の存在論」

絵画や彫刻などの造形芸術の起源は,全てを風化させ消滅させてしまう時の流れへの抵抗,つまり美学的というよりも心理学的な動機にあるものとバザンは見ている。肖像画などは今,この瞬間を永続的に保存しようという営為だというわけだ。従って,造形芸術の歴史というのは(美学的側面もあるものの)第一にリアリズムの歴史であるという。

写真や映画の登場は造形芸術の歴史を一変させる大事件だったという。絵画や彫刻よりも非主観的かつ正確に現実を写し取る写真や映画は,絵画や彫刻をリアリズムから解放した。

「私たちは写真を造形芸術におけるもっとも重大な出来事とみなすことができる。それは解放であると同時に成就であり,写真のおかげで西欧絵画はリアリズムへの執着をきっぱりと捨て去って,美学的自立性を取り戻すことができた」(『映画とは何か』(上),20ページ)

先ほど,本書の文章を「気取っておりペダンチックで思わせぶりな文章」と述べたが,それは例えば第4章「沈黙の世界」の冒頭のこんな文章に代表される:

「『沈黙の世界』〔ジャック=イヴ・クストールイ・マル監督,1956年〕を批評するのは,なるほど馬鹿馬鹿しさを免れないことだろう。この作品の美しさは,要するに自然の持つ美しさなのであって,この作品を批評することは神を批評するに等しいからだ」(『映画とは何か』(上),55ページ)

「この作品を批評することは神を批評するに等しい」とか言いながら,このあと批評が行われるのが,なんともおかしみを感じる。だが,海洋ドキュメンタリー映画である『沈黙の世界』の魅力が「重力からの解放」にあるという指摘は鋭いなと思わせる。

「それは三次元の世界,しかも空気に包まれた世界以上に落ち着いた,均質な世界であり,私たちを包み込んで重力から解放してくれる。私たちを地上に縛りつける鎖からの解放は,結局のところ鳥によってと同様,魚によっても象徴されうるものなのだ。」

「私たちの想像力を超えた科学の力のおかげで,人間は自らのうちに魚と同じ能力が秘められていたことを知り,空を飛ぶという古くからの神話を水中で現実のものとした。その神話は,騒々しい音をたてる金属の塊である飛行機よりも,アクアラングを着用したダイバーによってはるかに満足のいくかたちで実現された」(『映画とは何か』(上),56~57ページ)

各論考とも,読み進めていくうちにバザンの言う通りのような気がしてくる。バザンの文章力(訳者の力量も含めて)たるや,恐るべきものである。

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2015.04.13

卯月十三日のキュレーション:ニムルド遺跡破壊,鹿賀丈史と松田優作ほか

例によってウェブ上で気になった雑多な話題を羅列する。


◆   ◆   ◆


<IS,ニムルド遺跡破壊>

まー,とんでもないことしよる。

ダーイシュ(イスラム国)が古代アッシリアのニムルド遺跡を爆破」(ハフィントンポスト,2015年4月12日)

確か,イスラム教の多くの国々の見解では,現在崇拝の対象となっていない壁画や彫像などは偶像とみなさないということだった。だが,原理主義者たちは遺跡であっても偶像崇拝とみなして破壊の限りを尽くすことにしているようだ。

ニムルド遺跡は古代アッシリアの遺跡。アッシリアの時代にはカルフと呼ばれたらしい。紀元前13世紀のアッシリア王シャルマネセル1世が第二王宮をここに建設し,紀元前9世紀にアッシュールナツィルパル2世が首都としたという。

ここで発見された黒のオベリスクや人頭有翼獣など,重要な遺物の一部は大英博物館に移されており,それがせめてもの救いである。


1951 年の Nimrud の考古学の Mallowan のアッシリアのアイボリーのライオン


◆   ◆   ◆


<鹿賀丈史と松田優作>


鹿賀丈史・1歳違いの松田優作に刺激受け映画デビュー」(The PAGE,2015年4月12日)

記事の内容の大半は鹿賀丈史が出演する舞台『デスノート The Musical』に関する話だが,松田優作とのエピソードも後半に登場する。

鹿賀丈史は1950年金沢生まれ。松田優作は1949年下関生まれ。二人が共演した『野獣死すべし』(1980年)は強烈な映画だった。

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◆   ◆   ◆


<「パペラキュウ」更新>

2011年8月1日以降,月一回更新されるWeb漫画,『パペラキュウ』。

パペラキュウ」(by 松永豊和)

今月も面白い。現在45話。松永豊和先生は,『ナニワ金融道』青木雄二先生のアシスタントだったんだよね。その辺の話は松永豊和先生の自伝的小説『邪宗まんが道』に描かれている。


◆   ◆   ◆


<世界水フォーラム開会式パフォーマンスで水時計「自撃漏」が倒れ,朴大統領が恥>

大邱で第7回世界水フォーラムが開催された。

開会式パフォーマンスとして朴大統領はじめ各国要人が水時計「自撃漏」を作動させる綱を引いたのだが,水時計が転倒するという残念な結果となった。


世界水フォーラム開会式で2mの水時計「自撃漏」が倒れる騒動」 (ヨンハンニュース,2015年4月12日)

記事はハングルで書いてあるが,写真を見れば一目瞭然。ケンチャナヨ精神で準備したんじゃないのかな。

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2015.04.09

都内,泊まれないんですけど

最近,東京に出張するときに困っているのが,ビジネスホテルの予約が取れないということ。

いや,別に空きがないわけではないです。問題はお値段。アパホテルとか20,000円台だったりする。今や,普通のビジネスホテルで10,000円以下で泊まれるところはほとんどない。規定の宿泊額を超えてしまう。

この状況,どうも東京を訪れる外国人観光客の増加が原因だという噂。

昨年の外国人観光客は1341万人を超えたという(参考)。また,この春には莫大な数の中国人観光客が来日し,ビザが不足する恐れまで発生している(参考)。

2020年までこの状態が続くのだろうかと心配になる。

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2015.04.06

山口県立美術館特別展「超絶技巧!明治工芸の粋」を見てきた件

そろそろ会期も終わりだということであわてて山口県立美術館特別展「超絶技巧!明治工芸の粋」を見てきた。

清水三年坂美術館所蔵の村田コレクション一挙公開である。

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七宝,金工,刀装具,木彫,牙彫,自在,刺繍絵画,印籠,漆工,薩摩焼…と,信じられないくらい華麗,信じられないぐらい細密な明治の工芸品が展示されていた。

当時,輸出品として好評を博していたというが,それも納得。現在でもこのようなレベルの工芸品は作ることが難しいと思われる。

入場すると最初に代表選手とも言うべき作品を目にすることになるが,どれも素晴らしい。

  • 並河靖之 『桜蝶図平皿 (さくらちょうずひらざら)』 (七宝)
  • 濤川惣助 『藤図花瓶 (ふじずかびん)』 (七宝)
  • 正阿弥勝義 『古瓦鳩香炉 (こがはとこうろ)』 (金工)
  • 白山松哉 『渦文蒔絵香合 (うずもんまきえこうごう)』 (漆工)
  • 赤塚自得 『四季草花蒔絵提箪笥 (しきそうかまきえさげたんす)』 (漆工)
  • 錦光山 『花見図花瓶 (はなみずかびん)』 (薩摩)
  • 無銘 『伊勢海老 (いせえび)』 (金工)
  • 安藤緑山 『竹の子,梅 (たけのこ,うめ)』 (牙彫)

持って帰って虫眼鏡で鑑賞したいぐらいだが,それはできない。
やむを得ず,図録を購入して帰る次第である。

小生は海外に行った折にお土産として工芸品を買ってきたりするわけだが,やはり日本の工芸品のレベルが高すぎて比較にならない。日本は今後,再び明治期のようなハイレベルの工芸品を売ることによって外貨を稼ぐしかないんじゃないかと思った。

それにしても,山口県立美術館はここ数年,「五百羅漢図」だの「大浮世絵展」だの,大ヒットばかり飛ばしている。前々知事の二井関成さんが館長に就任して以来,絶好調。

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2015.04.05

上野誠『日本人にとって聖なるものとは何か 神と自然の古代学』を読む

著者は小生よりも10歳年上の古代文学研究者。

本書では,主に万葉集を手掛かりとして,聖なるものに対する日本人の感性とその成立過程を探っている。

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聖なるものに対する感性は,古代人のみが有していたものではなく,現代の日本人にも受け継がれ実感されているものである。

その実感は本書にも引かれている西行法師の(作と伝えられる)歌:

何事の おはしますをば しらねども かたじけなさに 涙こぼるる

に端的に表されている。

日本各所には,クスノキの大木,海岸にそびえたつ奇岩,崖から湧出する石清水など「聖なるもの」を感じさせる景観が点在しており,近年ではこれらの場所を「パワースポット」と呼び,詣でる人々もいる。こうした感性は古代から受け継がれてきたものであり,日本文化を構成する重要な柱の一つであると言えるだろう。

著者は「モリ」「ミモロ」「カムナビ」といった万葉集に登場するキーワードを頼りに,7~8世紀の人々の宗教観・自然観(古代思考)を明らかにしていく。読者は本書を読み進めるにつれ,現代日本人が受け継いでいるもの(古代思考)を強く認識するようになるだろう。


◆   ◆   ◆


本書では独特の見解が示されており,小生は蒙を啓かれる思いがした。詳細は本書を読んでいただくこととし,ここでは短く紹介するにとどめる。


「とめどなく生まれ出ずる神々」

「多神教というと,たくさんの神がいる宗教と考えてしまいがちだが,じつはそうではない。あらゆる事物が神となり得るのだから,無限に神が生まれ続ける文化構造と考えねばならないのである。」(序章,11ページ)

…ということは,神々が増え続けるにつれ,神々同士の覇権争いが生じることとなる。地域を代表する座を巡って,また国を代表する座を巡って。神々の競争については本書第八章の終わりに「神々の競争と優勝劣敗と」という節で触れられている。競争の結果として神々には序列が生じるわけで,記紀成立時には記紀に記されているような序列が定まったわけである。ただし,これはその時点での序列であって,常に競争が行われ序列が変化していくというダイナミズムがあるというのが著者の見解である。なるほど。


「原恩主義」

「今日的感覚からすれば,ご先祖さまに申し訳がないとか,おてんとうさまが見ているという感覚である。キリスト教のように,生まれながらに原罪を背負い,贖罪のために生きるという考え方とは,まったく逆である。『原罪』に対して,『原恩』と呼び得る感覚である。」(第二章 原恩主義の論理,40ページ)


「万葉集巻一・巻二は明日香・藤原思慕歌集」

「(明日香は)平城京で生まれた人びとにとっては,父と母の暮らしていた土地として記憶に留められていたのであった。この記憶を後世に残したいという感情こそ,『万葉集』という歌集を誕生させた一つの原動力なのである」(第四章 「カムナビ」と呼ばれた祭場,聖地,122ページ)


ほかにも持統天皇御製の歌:

春過ぎて 夏来たるらし 白たへの 衣干したり 天の香久山

についての新解釈(「香久山自身が衣を干しているのだ」とする鉄野昌弘説)など面白い話が本書には満載である。


◆   ◆   ◆


記紀を対象,あるいは天照大神や素戔嗚尊など特定の神々を対象とする書籍は多いが,この本は山や森などに宿る小さな神々を対象としている。その点では谷川健一『日本の神々』(岩波新書)が類書といえるだろう。また,古代思考(宗教観・世界観)に焦点を当てているという点では">西郷信綱『古事記の世界』(岩波新書)が思い出される。併せて読むと理解が深まる。

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2015.04.02

AIIB: 亜州基礎設施投資銀行の件

さしあたってはADB(アジア開発銀行,Asian Development Bank)の強力なライバルになると目されているAsian Infrastructure Investment Bank (亜州基礎設施投資銀行,AIIB)のことだが,4月1日時点で31の国が創設メンバー(Prospective Founding Members (PFMs))として調印済み,23の国・地域が創設メンバーとしての参加を表明している。4月15日あたりで創設メンバーが確定するようだ。

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公式ホームページ(http://aiibank.org/)を除いてみると,調印済みの31か国とは

Bangladesh, Brunei, Cambodia, China, Germany, India, Indonesia, Jordan, Kazakhstan, Kuwait, Laos, Luxembourg, Malaysia, Maldives, Mongolia, Myanmar, Nepal, New Zealand, Oman, Pakistan, Philippines, Qatar, Saudi Arabia, Singapore, Sri Lanka, Switzerland, Tajikistan, Thailand, United Kingdom, Uzbekistan, Vietnam

のことである。

フィリピンやベトナムなど,中国ともめ事を抱えている国も入っている。あと,台湾(Chinese Taipei)も参加を表明しているので,政治的対立は政治的対立として脇に置いておいて,経済的には協力し合おう(あるいはおこぼれに与ろう)という国があることがわかる。付け加えれば,イスラエルも参加表明している。

イギリス,フランス,ドイツなど,ヨーロッパ各国が大量に流れ込んだ背景にはASEAN各国からの働きかけがあったというが,ニュースソースを忘れてしまった。でもそういうことだろうと思う。ヨーロッパ各国はもはや中国/ASEAN市場にしか活路を見いだせない。

日米はそろって参加しないわけだが,今後どう振る舞うのだろうか? 私たちは歴史の転換点を見ているのかもしれない。

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