森鴎外『椋鳥通信』を読む(その2) 仏国脚本家に見る年収格差
昨年10月に森鴎外『椋鳥通信(上)』が岩波文庫に入った。
前にも紹介したが,森鴎外のtwitter集あるいはblog集のような感じである。結構売れているようである。
そして,先月半ばに『椋鳥通信(中)』が刊行されたので,昨日,近所の宮脇書店で購入してきた。
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中巻もトルストイの健康状態とか家出の話やら南アフリカで弁護士をしていたガンジーの著書がインドで発禁となった話やら,様々なワールドニュースがてんこ盛りで楽しい。
だが,今回の話題は,中巻からではなく,上巻からのものである。
「仏国脚本家に見る年収格差」
1909年5月15日発椋鳥通信の終りの所にフランスの脚本家4500人の年収についての記事がある。4500人中4000人は年収25フランだそうだが,他方では年収150,000フランの脚本家もいる。鴎外が少しばかり詳しい統計値を紹介しているので,それをグラフにしてみた:
人数があまりにも違うので横軸を対数表示にしている(「5000フラン未満」というのは下位の4000人を除いた500人の中での一番下の階級)。
試みに,年収5000フラン未満の脚本家たちの平均年収を2500フラン,5000フラン以上10000フラン未満の脚本家たちの平均年収を7500フラン,…というように,階級別の代表値を設定すると,
20000フラン未満の脚本家(4458人,99%以上)の年収の合計: 1,795,.000フラン
20000フラン以上の脚本家(42人,1%未満)の年収の合計: 2,150,000フラン
となる。
上位1パーセント未満の脚本家たちの年収が残り99パーセント以上の脚本家たちの年収を上回る格差社会。
ちなみに,この話は年収の格差なので,最近のピケティが問題にしている"r > g"の格差とは別の話。
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