天野先生がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!
2014年のノーベル物理学賞受賞者の天野浩先生が宇部にやってくるというので,講演を見に行った。
場所は山口大学常盤キャンパス。天野先生のご講演は山口大学創基200周年記念行事という位置づけである。講演は午後2時45分から午後4時半までの105分で,2時には会場の前に長蛇の列ができていた。
講演内容はおよそ3つに分かれていて,
- 11月の受賞決定の発表から今日に至るまでの忙しい日々の話
- 今回受賞に至った研究の内容
- 今後の研究の展開と省エネルギーへの貢献
といったことが話された。最後に,今回,天野先生がノーベル賞を受賞することになった研究成果は天野先生が20代のときのものなので,若い研究者の方々も頑張ってくださいというメッセージで講演が締めくくられた。
面白かったのは,受賞決定後,スウェーデンのテレビの取材で酷い目に遭ったという話。疲れて熱が出て大変だったのにもかかわらず,天野先生の日常を撮影したいというスウェーデンのテレビ局の希望で,無理やりジョギングさせられ,撮影されたということである。
天野先生が青色LEDの研究を始めることになるのは,学生の頃に,ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズといったスーパースターが登場してパーソナル・コンピュータの世界が興隆しはじめたので,なにかこの分野に貢献したいと思ったことがきっかけだそうである。しかし,当時名古屋大学にはコンピュータの素子に関する研究領域がなかったので,コンピュータ・ディスプレーの分野で役に立ちそうな青色LEDの研究に加わることにしたという。
あと,赤崎先生と天野先生の研究成果は特許化されたものの,それを迂回する形で中村修二氏の発明が行われ特許化されたという話も出た。知財戦術上,面白い話題である。だが,ちょっとマニアックで一般受けしない話かもしれない。
講演後に会場の一般の聴衆から「天野先生の研究成果には偶然に助けられた要素があるのでは」というコメントが寄せられた。これに対して,天野先生が「ノーベル賞の対象となった研究成果には偶然の要素もあるが,いろいろと最大限,頭を使いながら莫大な量の試行錯誤を重ねた結果えられた成果であることを理解してほしい」という回答があったことも記しておきたい。天野先生が見せた学者としての矜持である。
講演後,同僚T博士と出待ちしていたら天野先生の御近影を移すことができたので,ご紹介したい:
上の写真はT博士ご提供のもの。
小生は天野先生が送迎の車に乗り込むところを撮ったがイマイチ:
ちなみに,なぜ,天野先生が山口大学に来たかというと,山口大学が白色LEDの研究拠点で,天野先生のGaN(窒化ガリウム,ガリウムナイトライド)の研究の一翼を担っているからである。
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