イスラム過激派に関する問題を根本から学び直す
例の人質事件といい、その前の風刺画に端を発するパリの新聞社襲撃事件といい、日本に住む私たちもイスラム教について無知のままでいてはいけない状況になっている。
イスラム教自体やムスリムの生活習慣について知ることも重要だが、今、緊急度が高いのは、なぜイスラム過激派と呼ばれる人々が存在するのか、という理由について知ることだと思う。
イスラム過激派の問題は、19世紀に西欧の科学技術、思想、資本主義が世界を席巻し、イスラム世界が危機に直面したことに端を発している。
東アジアや東南アジアも西欧文明の脅威に直面したわけだが、基本的には西欧文明をかなりの程度受容することによって対応した。明治維新なんかその代表例である。
これに対し、宗教が信仰の領域にとどまらず、生活、道徳、法、政治と人間活動に関わるあらゆる領域に浸透しているイスラム世界では、西欧文明を簡単に受け入れることはできなかった。
例えば、イスラム世界にはシャリーアと呼ばれる法体系が確立されているが、全く異質な西欧由来の法体系と併存させるのは容易なことではない。だが、残りの世界では西欧の法体系が受容されており、イスラム世界が他の世界と付き合いを続ける限りは、西欧の法体系との付き合い方を模索せざるを得ない。
イスラム世界の西欧文明への対応は様々であった。ある者は、西欧社会をモデルとしてイスラム社会の改革を図った。トルコのようにアタテュルクの強力なリーダーシップの下、政教分離を実現した国もある。別の者は、原点回帰路線を採り、シャリーアへの依拠を強めた。原理主義の勃興である。
現代のイスラム過激派の問題は、イスラム世界の西欧文明に対する様々なリアクションの一つである。その根本原因を探ろうと思えば、まず原点である、19世紀のイスラム世界の危機から学ばなくてはならない。
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