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2015.01.13

ロシア語の思い出:finalvent氏のロシア語学習によせて

最近,finalvent氏がロシア語学習を開始したという。

[書評] 羊皮紙に眠る文字たち(黒田龍之介)」(極東ブログ,2015年1月9日)

フランス語,中国語,ドイツ語と次々に精力的に語学を修めておられるので脱帽せざるを得ない。

ロシア語と言えば,小生も20数年前に大学で第二外国語として選択したわけである。大学院の入試でもロシア語の試験を受けた。

finalvent氏のロシア語学習のはなしをきっかけとして,小生もロシア語学習の思い出を2,3披露したい。


◆   ◆   ◆


1. be動詞を使わないので驚いた

ロシア語学習の最初の段階で,"This is a pen"的なことを習うのだが,冠詞もbe動詞もない,やけに簡単な構造の文章だったので驚いた。

ロシア語で"This"は"Это"(エータ),"pen"は"ручки"(るーチキ)である(巻き舌r音をひらがなで表しておく)。

"This is a pen"はロシア語ではこうなる:

Это ручки.

そのまま読むと「これ,ペン」ということになる。


◆   ◆   ◆


2. でもbe動詞を全然使わないわけではない

ロシア語にbe動詞が全然存在しないわけではなく,"есть"というものがちゃんとある。これは"I have ..."というような文を話す時に用いられる。

"I have a pen"はロシア語ではこうなる:

У меня есть ручка.

直訳すると「私のところにペンがあります」ということになる。"У меня"は「私のところに」,"есть"はbe動詞で「ある」の意味。


◆   ◆   ◆


3. キリル文字の"в"は"b"ではなく"v"だ

小生にとってはキリル文字はかっこよく見えた。筆記体もかっこいい。今でも書ける。

ロシア語のアルファベットは,"а, б, в, ..."(アー,ベー,ヴェー)で始まるが,"б"が"b"で,"в"は"v"である。

キリル文字の"в"はギリシャ文字の"β"に由来する。

一昨年,本ブログで「ベータ(β)はいつヴィータとなりたまいしか?」(2013年3月13日)という記事を書いたが,古代ギリシャでは"β"は"b"だった。その伝統を受け継ぐのがラテン文字である。

ところが,古代ギリシャでも紀元300年頃から"β"は"b"から"v"に変化したらしい。その伝統を受け継ぐのがキリル文字である。現代ギリシャ語でも"β"は"v"になっている。

整理すると

"β"="b"系: 英語などラテン文字を使う言語,古代ギリシャ語
"β"="v"系: ロシア語などキリル文字を使う言語,現代ギリシャ語

という状況である。


◆   ◆   ◆


4. "h"の発音はキリル文字の"х"ではなく,"г"で表す

ローマ字の"h"をキリル文字で翻字するときは"x"(ハー,khの発音)ではなく,"г"(ゲー,gの発音)を用いる。

ということは"Yokohama"(横浜)は"ёкогама"(ヨコガマ)になるわけである。変な感じ。

ほかにもロシア語学習についてあれこれ思い出があるが,とりあえずこの辺で締めておく。

そうそう最後に。小生がロシア語について興味を持ったのは高校生の頃なのだが,そのころ読んでいたのがこの本:

ロシア語のすすめ (講談社現代新書 95)ロシア語のすすめ (講談社現代新書 95)
東郷 正延

講談社 1966-11
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シベリアに抑留された日本軍兵士によるロシア語の思い出が紹介されているなど,今読むと古色蒼然たる内容だったが,当時はとても面白く読んだ。

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