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2014.12.09

ブッツァーティ『タタール人の砂漠』を読む

先日,インドネシアに出張したのだが,その旅のお供に持っていった本がブッツァーティ『タタール人の砂漠』(岩波文庫)である。

以前,岩波のブックカバーを入手した話を書いた時に紹介したが(参照),ちゃんと読んだのは今回が初である。

インドネシア出張時には読み切れなかったが,昨日,東京出張の際に読み切ることができた。

タタール人の砂漠 (岩波文庫)タタール人の砂漠 (岩波文庫)
ブッツァーティ 脇 功

岩波書店 2013-04-17
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とある国の若き将校,ジョヴァンニ・ドローゴ中尉は,初任地としてバスティアーニ砦に派遣される。バスティアーニ砦は北の国境に位置し,砦のむこうには「タタール人の砂漠」と呼ばれる広大な砂漠が広がっている。ドローゴ中尉とその上司・同僚・兵士たちはいつか現れるかもしれない敵に備えながら,同時に敵の襲来を期待しながら,変化のない毎日を延々と過ごしている。

ドローゴは一時的に故郷に戻ることもあったが,故郷での生活に馴染めなくなってしまい,また同時に敵と戦うという英雄的な願望を捨てられなくなってしまい,結局,三十年余りの日々を砦で過ごすこととなる。彼の青春は無為に消費されてしまった。

そして,軍人としてのキャリアの最後になって待ちに待った敵が襲来するのだが,肝心のこの時,ドローゴは重い病に侵されており,砦から遠ざけられてしまう…。


先日紹介した『ブラック・スワン』の著者ナシームはこの物語がとても気に入っているようで,同書では,「ブラック・スワン/黒い白鳥」を待ちわびて人生を浪費してしまった人物としてドローゴが紹介されている。


だが,小生はこの物語を単に人生を浪費した話だとは思っていない。

待ち望んでいた北の敵との戦いからも遠ざけられたドローゴは,だれにも邪魔されない自分自身の最後にして最大の戦いとして死に立ち向かう。これを描いた最終章29章は非常に感動的である。

『タタール人の砂漠』は人生の皮肉,生の矛盾を描いた物語ともいえるが,希望や誇り,そしてまた,死の肯定的意義を最後の最後に描き出した物語であるともいえる。

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