コーヒー生産量世界一の国はブラジル。では第2位は?
答えはベトナムである。
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最近やたらにコーヒーを飲む割には,コーヒーの世界情勢に無頓着だったのだが,先日上梓された加納啓良『「資源大国」東南アジア』を読んで,ベトナムがコーヒーの世界で台頭していることを知った。
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東南アジア各国,とくにタイ,インドネシア,マレーシア,フィリピンといった国々ではすでに第二次産業の付加価値生産額が第一次産業を上回り,工業化が進んでいるのだが,それでもなお,これらの国々から輸出される一次産品は世界経済を支えている。
東南アジアで生み出される,コーヒー,茶,砂糖,米,天然ゴムといった一次産品の歴史と現状を紹介するのが,本書,『「資源大国」東南アジア』である。
著者はアジ研出身のインドネシアの専門家である。
第1章ではコーヒーと茶が取り上げられているが,コーヒーに関する記述が大半を占める。
日本人は20世紀初頭には年間一人当たり数グラムのコーヒーしか消費していなかったのだが,いまや欧米人並みに年間一人当たり3.29kgものコーヒーを消費するようになっている。コーヒーの消費拡大は日本だけの話ではなく,世界中で起こっている現象である。
19世紀ごろはインドネシアが世界のコーヒー生産の一翼を支えていた。しかし,1890年代にインドネシアでさび病が流行し,当時の主力品種であったアラビカ種は壊滅。また,中南米でのコーヒー生産が始まり,中南米が世界の中心となった。
第一次世界大戦後,インドネシアでは病気に強いロブスタ種(ロブスタはrobust,つまり強靭の意味)が栽培されるようになりコーヒー生産が復活。独立後も生産量を伸ばし,コーヒー大国の地位を占めるようになった。
昨今急激に生産量を伸ばしているのがベトナムである。ベトナムは今や世界第2位の生産国となった。
下に国際コーヒー機関による統計値(2013年の生産量)をグラフ化したものを示す。ここでは加盟国のうちの上位10か国を取り上げた:
単位は1000袋(1袋は生豆60kg)。ブラジルの生産量が断トツだが,その6割ぐらいに匹敵する量をベトナムが生産している。その次がインドネシアで,さらにその次がコロンビアである。これら4傑で世界のコーヒー生産量の三分の二を占める。
地域別でいえば,今のところ,南米全体のコーヒー生産量は東南アジア全体のそれを上回っているが,もはやコーヒーといえば南米というイメージは過去のものとなっている。
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