フィリップ・ジャンティの『忘れな草』を見てきた
この日曜日(2014年11月16日),フィリップ・ジャンティの作品『忘れな草』の公演を見るために,ツマと一緒に北九州芸術劇場まで出かけてきた。
Campagnie Philippe Genty Ne m'ouble pas:
これは,ダンサーと等身大の人形とが共演する不思議な舞台である。
見ているうちに,どちらがダンサーでどちらが人形かわからなくなってくる。ダンサーが巧みに人形を操っているということもあるが,むしろ,ダンサーがうまく人形の動作を真似ているということの方が大きい。
内容は……というと,とても説明できない。様々な夢/思い出/イメージを重ね合わせた美しい舞台である。評論家はよく「フィリップ・ジャンティの魔法」というが,その通りとしか言いようがない。
この舞台を見て数時間経った現在,もし同系統の印象を与えるような作品を挙げよと問われれば,ラウル・セルヴェ『夜の蝶』(1998年)やユーリ・ノルシュテイン『話の話』(1979年)といった映像詩(アニメーション)を挙げることになるだろう。
『忘れな草』は畏まった作品ではない。ダンサーの身体能力は驚異的だが,ユーモラスな動きもあって笑いながら見ても良い作品である。ひたすら美しさと不思議さを鑑賞し続ければよい。
見たものにどうしても意味を見出して講釈しようとするのは人間の性(さが)であるとナシームは『ブラック・スワン』で述べていた。本作品は上に挙げた映像詩たちと同様に,講釈から完全に自由である。
本作は1993年に評判を呼んだ同名の舞台のリニューアル版である。フィリップ・ジャンティは2012年からノルウェーの演劇学校の学生たちと『忘れな草』を再演するプロジェクトを進めていた。途中,フィリップ・ジャンティは脳梗塞に倒れるが,復活後,演劇学校の学生たちが持っていた声の魅力や雪に覆われたノルウェーの景色に着想を得て,50パーセントを作り替えたという。
↑「リバーウォーク北九州」。この6階「北九州芸術劇場」で『忘れな草』を見た。
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