過去形とは現状の否定である
イェスペルセン『文法の原理』をだらだらと読み進めているが,いよいよ終焉に差し掛かっている。
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下巻では時制,話法,否定形などが扱われているが,過去時制について面白い記述があった。
過去時制は過去のことに関する叙述に用いられるのが普通だが,願望を表す時や条件節にも用いられる。
下巻44ページの例を示すとこのようになる:
- At that time he had money enough. (当時,かれは金をたっぷりもっていた)
- I wish he had money enough. (かれに金がたっぷりあればいいのだが)
- If he had money enough (もしかれが金をたっぷりもっているなら)
イェスペルセンはこれらの文(単純過去,願望,条件節)についてこのように言う:
「これらの文は,おのおの独自の仕方で,
- He has money enough. (かれは金をたっぷりもっている)
と対立しているのだ。」(イェスペルセン『文法の原理』下巻44ページ)
つまり,過去形で語るということは,「現在,そうでない」ということを述べていることと同じなのである。
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