『文法の原理』:否定表現の揺れ
イェスペルセン『文法の原理』を読み終えた。ずいぶん時間がかかったものである。
『文法の原理』下巻の24章では否定表現に関する様々な話題が取り上げられている。
(Photo by rosevita, morguefile.com)
小生が興味を持ったのは「否定表現の揺れ」。下巻の269ページに取り上げられている。
否定の表現が音声的に弱いと感じられると,別の強めの否定表現が加えられるという話。
英語に関しては,歴史的に否定表現が弱まったり強まったりという循環がある。
「わたしは言わない」という内容の英文は次のように変遷した。
Ic ne secge.
↓
強勢
↓
I ne seye not.
↓
弱勢
↓
I say not.
↓
強勢
↓
I do not say.
↓
弱勢
↓
I don't say.
今使われている表現"don't"は"do not"よりも音声的に弱い。
イェスペルセンの本には取り上げられていないが,小生などは"can't"などは極めて弱い表現であると思う。なぜなら"can"と"can't"は(小生が日本人だからだと思うが)注意して聞かないと,間違える可能性が高い。"cannot"ならば"can"との区別は明確だ。
イェスペルセンは英語の否定表現の将来について何も語っていないが,いずれ,"don't"という表現を強化するための新たな否定表現が登場するのかもしれない。
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