語形変化の単純化:英語も日本語も
このあいだまでイェスペルセン『文法の原理』を読んでいたが,その余勢を駆ってブラッドリ『英語発達小史』を読んでいる。
(Photo by jdurham, morguefile.com)
ブラッドリは英語学者でありOEDの編纂者である。イェスペルセンの生没年は1860~1943年,ブラッドリのそれは1845~1923年であるから,イェスペルセンの少し先輩にあたる。
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ブラッドリは語形変化の主たる原因として「音声変化」と「民族の混淆」を挙げている。
英語では名詞の語尾変化が無くなり,複数形の"s",属格の"'s"だけが残った。もちろん例外はあり,"tooth" -> "teeth"や"ox" -> "oxen"のようなものは残っている。
『英語発達小史』ではあまり詳しく述べられていないが,動詞も中英語期以降,単純化が進む(参考:English History「文法的な変化」)。
こうした語形変化の単純化の一方で,名詞の形容詞的活用や助動詞の拡大用法など,あらたな文法上の仕組み(ブラッドリは「新素材」と呼んでいる)が登場し,英語の発達を助けた。
さて,語形変化の単純化は日本語でも起こっている。このあたりはWikipedia「日本語」の「文法史」が詳しい。
日本語の動詞における語形変化を「活用」という。日本語の動詞の活用形は「未然形」,「連用形」,「終止形」,「連体形」,「仮定形(已然系)」,「命令形」の6つである。これは今も昔も変わっていない。しかし,活用の種類は平安時代には9種類あったが,現在では5種類に減少している。形容詞の活用は平安時代には2種類あったが,現在では1種類だけである。
もちろん英語と同じように,単純化だけではなく,表現を豊かにする「新素材」も登場している。可能動詞や受身表現がそれである。
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