映画『舟を編む』を観た
『舟を編む』(石井裕也監督,松田龍平,宮﨑あおい主演)。
ずっと前にテレビで放映されていたのを録画したまま放置していたが,本日,ようやく観た。
玄武書房の辞書編集者たちが1995年から2010年までの15年をかけて大辞典『大渡海』を編むという話。
観た人も多いことだろうからあらすじは省略。印象に残ったことだけ述べる。
松田龍平演じる辞書編集者・馬締光也(まじめ・みつや)の猫背の歩き方は,『蘇える金狼』で松田優作が演じた真面目な会社員(を装っている)・朝倉の幽霊のような歩き方を彷彿とさせた。
馬締光也の妻・林香具矢(はやし・かぐや)を宮崎あおいが,西岡(オダギリジョー)の恋人・三好麗美(みよし・れみ)を池脇千鶴が演じている。この二人,演じていた役を入れ替えても映画の雰囲気が変化しないような気がする。なんとも不思議な配役。
『大渡海』の監修を務める松本朋佑を加藤剛が演じていたが,これは適役。辞書完成を見ずに死去するという雰囲気が初めからあった。
◆ ◆ ◆
『大渡海』は完成までに15年かかっているが,辞書・辞典に関わる苦労話は多い。
『大漢和辞典』の話
世界最大の漢和辞典として知られる『大漢和辞典』(大修館書店)は1925年に発案されてから,1955年の第1巻刊行までに30年(1943年にも第1巻が刊行されたが,後述する空襲のため,刊行中断)。1960年の第13巻刊行で完結するまでに35年の月日が流れている。その間,空襲で大修館とともに印刷用の版が全て焼損したり,辞典編纂の代表者だった諸橋轍次が失明したりと数々の困難に見舞われている。なお,2000年に「大漢和辞典補巻」が刊行されているので,それを完成とすれば,なんと完成までに75年かかったことになる。
『佛教語大辞典』の話
哲学者中村元(なかむら・はじめ)はただ一人で20年かけて『佛教語大辞典』を執筆していた。しかし,その原稿3万枚は,某出版社に渡されたあと,その出版社の引越しの際に紛失されてしまった。中村元はその後,原稿を最初から書き直し,8年かけて完結させ,別の出版社,東京書籍から全3巻で刊行した。項目数は45000に上る。
ということで,辞書の執筆・編纂は生涯をかけるのに足る偉大な仕事なのであります。
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