中国資本でニカラグア運河が誕生
太平洋と大西洋をつなぐ水路といえば,パナマ運河だが,最近,中国資本によってニカラグア運河の建設が始まりそうだという報道があった:
「米の裏庭 中国発5兆円事業」(2014年6月23日 朝日新聞1面)
「巨大運河建設 動く『神秘の男』」(同上 2面)
「神秘の男」というのは香港ニカラグア運河開発投資有限公司(HKND社)の総裁,王靖氏(41歳)のことである。王靖氏は信威通信産業グループを率いる経営者だが,朝日新聞の報道内容から推測すると中国共産党の最高指導部と強いつながりがあるようだ。
ニカラグア運河が完成すると,パナマ運河よりも大型の船が通過できるようになり,南北米大陸周辺の物流が激変する可能性がある。
◆ ◆ ◆
ニカラグア運河というのは実は,パナマ運河とともに有力な物流ルートとして19世紀ごろから建設構想があった。
ただし,ニカラグアにはモモトンボという厄介な火山があるため,ニカラグアルートではなく,パナマルートが選択され,1914年にパナマ運河が開通した。
こうしてニカラグア運河のことは忘れられてしまったのだが,今,中国資本によって構想が復活したわけである。
◆ ◆ ◆
ニカラグア運河のことで思い出したのが,"Shifting Sea"という大昔(1937年)のSF。
ニカラグア運河計画に関与していた主人公が,飛行機でニカラグア上空を移動中に,巨大噴火を目撃するところから話が始まる物語である。
この大噴火によって,ニカラグアやパナマなど,中南米の陸地の多くが海中に没し,南北アメリカが分断されてしまう。その結果,海流が変動し,西欧諸国の気温を維持していたメキシコ湾流が西欧に到達しなくなり,西欧諸国民が生存の危機に瀕する,という内容である。
これを丁寧に翻訳して公開しているページ(「海流移動」)があるので,時間がある人は読んでいただきたい。
運河の話と,地峡分断による気候変動の話は直接関係ないが,ニカラグアやパナマなど中南米の状況変化が世界に大きな影響を与えるという点では似ているかも。
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