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2014.06.24

米国務省「人身売買に関する年次報告書 2014」で「JKお散歩」が取り上げられた件

昨年,米国務省の「人身売買に関する年次報告書」の内容をもとに,「人身売買対策に関して日本は2等国扱い」(2013年6月21日)という記事を書いたわけですが,今年も「女子高生お散歩」という具体名を挙げて,日本が叩かれております:

米国務省「人身売買に関する年次報告書 2014年版」日本に関する記述(英文)
http://www.state.gov/j/tip/rls/tiprpt/countries/2014/226748.htm

やはり,今年も日本はTier 2すなわち二等国扱いである。
日本についての報告はこんな記述から始まっている:

Japan is a destination, source, and transit country for men and women subjected to forced labor and sex trafficking, and for children subjected to sex trafficking.

日本は労働や売春を強制されている成人男性・女性,売春を強制されている児童の消費地であり生産地であり集散地である,と述べられている。

「女子高生お散歩」の記述は2段落目に見られる:

Japanese nationals, particularly runaway teenage girls and foreign-born children of Japanese citizens who acquired nationality, are also subjected to sex trafficking. The phenomenon of enjo kosai, also known as “compensated dating,” continues to facilitate the prostitution of Japanese children. In a recent trend called joshi-kosei osanpo, also known as “high school walking,” girls are offered money to accompany men on walks, in cafes, or to hotels, and engage in commercial sex. Sophisticated and organized prostitution networks target vulnerable Japanese women and girls in public areas such as subways, popular youth hangouts, schools, and online; some of these women and girls become trafficking victims. Japanese men continue to be a significant source of demand for child sex tourism in Southeast Asia and, to a lesser extent, Mongolia.

(拙訳)日本人,特に家出少女や外国生まれの子供たちは売春をさせられている。「援助交際」,つまり「報酬のあるデート」という現象が日本の子供たちの売春を促している。最近では「女子高生お散歩」というものがあり,女子高生が男たちから金銭を受け取るかわりに,散歩や喫茶店やホテルに同行することを提案され,売春を約束させられている。洗練された組織的な売春ネットワークは,地下鉄・若者のたまり場・学校・ネットで,か弱い日本成人女性や少女たちを狙っている。これらの成人女性や少女たちの中には売春の犠牲になるものもいる。日本人男性たちは東南アジア,場合によってはモンゴルにおける児童買春ツアーの有力な顧客であり続けている。

この報告書の中では,売春だけでなく,外国人技能実習制度 (Trainee and Technical Internship Program)もまた,強制労働の温床として槍玉に挙げられている。

米国から見た場合,日本はG8の中で唯一,国連の人身売買防止プロトコル (the 2000 UN TIP Protocol)に加わっていない問題国なのだそうだ。


  ◆   ◆   ◆


日本は今,安全保障,端的に言えば軍事に関して「普通の国」になろうと努力をしているところである。しかし,上述したように,人権に関しては普通の国の域には達しておらず,米国に不合格の烙印を押されている状態である。

先日から都議会のセクハラ野次事件がガーディアン(参考)やウォールストリートジャーナルなど,英米のメディアに取り上げられ,女性の権利に対する日本の政治家の意識の低さが露呈されている有様である。これもまた,欧米から見れば,日本が人権に関して普通の国の域に達していないことの傍証となっている。

日本は日本,欧米の価値観なんかどうでも良い,という独自路線を歩むという手もあるが,政府・与党の発言を聴いている限り,国際社会の一員,というよりもとくに(G8ではなく)G7,つまり欧米主要国の一員でありたいという強い意思を感じる。

だとすれば,欧米の価値観に合わせて,安全保障のみならず人権でも欧米と同じレベルにもっていかなければまずいと思う。

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コメント

シャラップ上田の「ドントラフ英会話」が思い出されます。

投稿: 拾伍谷 | 2014.06.25 23:42

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