研究ノートはいつまで保存するべきか?
STAP細胞問題は何だかわけのわからないことになってきて,ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授にまで飛び火していたりする。
「京大 山中教授が自身の論文巡り会見」(NHK, 2014年4月28日)
14年前(平成12年)に発表したES細胞に関する論文に用いられている画像の一部が切り貼りされたのではないかとかいう指摘に対する記者会見が行われた。論文の内容は正しいが,当時の研究ノートが残っていない,という会見内容だった。
そのうち,野依理事長を含めすべての日本のノーベル賞受賞者の過去の論文にまで飛び火するんじゃないかと思えてきた。
で,さらに思ったのは根拠となるべき研究ノートはいつまで保存するべきか,という問題である。
<公文書の場合>
公文書の場合は「公文書等の管理に関する法律」という法律があって,公文書の保存の仕方が定められている。
公文書は行政文書,法人文書,特定歴史公文書等に分類される。
行政文書の保存期間については第5条にこのように書かれている:
第五条 行政機関の職員が行政文書を作成し、又は取得したときは、当該行政機関の長は、政令で定めるところにより、当該行政文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。
<中略>
5 行政機関の長は、行政文書ファイル及び単独で管理している行政文書(以下「行政文書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の保存期間。以下同じ。)の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては政令で定めるところにより国立公文書館等への移管の措置を、それ以外のものにあっては廃棄の措置をとるべきことを定めなければならない。
つまり,行政文書については行政機関ごとに保存期間を設定し,それが終わったら,歴史的意義に応じて公文書館への移管か破棄かを決定するということである。
法人文書に関しても同じような措置が取られる。
特定歴史公文書に関しては,一応永久保存が定められているが,第25条により,「歴史資料として重要でなくなったと認める場合には,内閣総理大臣に協議し,その同意を得て,当該文書を廃棄することができる。 」
というわけで,歴史的価値をもつ文書以外は寿命がある。
「公文書等の管理に関する法律施行令」を見ると,別表という形で行政文書の保存期間が示されている。
例えば,法律や条約や予算などを定める際に使用された文書類は30年,「個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯」に関する文書類は5年または10年となっている。
<一般企業の場合>
東京都中小企業団体中央会が文書保存期間の目安を示している。こまごまと分けられているが,総会議事録や役員会議事録などは10年(法律による),業務日誌は5年ということである。慶弔に関する文書なんかは1年。
<研究ノートはいつまで保存するべきか>
公的性格が強い文書ほど長期保存,私的性格が強い文書ほど短期保存,ということになると思うが,それは当然。
研究ノートを企業の業務日誌程度のものだと考えると,保存期間は5年でいいのではないかと思うが,およそ数多くの研究機関が公的資金で運営されていると考えると,倍の10年ぐらいかなあ?
本家本元,米国研究公正局 (ORI)の手引きをみると,
- 一般的には研究終了から5年
- 特許が絡む場合には特許の存続期間プラス6年
と記されている。
これを踏まえて,山中先生の当該論文が掲載された時点を研究終了時点とみなせば,研究ノートが無くても仕方ないのではないだろうか?
もちろん,当該研究がその後も続いているとか,特許が絡んでいるとか言えば別だが。
※ ※ ※
ちなみに,研究ノートを知的財産権保護のための証拠資料として使うためには,研究者本人だけじゃなくて確認者のサインも必要なのであしからず。
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