今年は(哲学における)京都学派誕生80周年
1934(昭和9)年に刊行された戸坂潤の著書『現代哲学講話』に初めて「京都学派」という言葉が登場する。これを以て哲学における「京都学派」という名称の誕生とすれば,今年は誕生80周年ということになる。
今,読んでいる竹田篤司『物語「京都学派」 - 知識人たちの友情と葛藤』(中公文庫)は,そのサブタイトルのとおり,「京都学派」を成立させた西田幾太郎や田辺元,その影響下にあった哲学者たちの交友や争いを描いた作品である。
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哲学における「京都学派」の最後の証人とも言うべき,下村寅太郎の残した莫大な記録をもとに,下村寅太郎を「進行役」として京都学派の人々の行動,人となりを描いている。
思想の細かい部分ではなく,事実関係に重きを置いた内容となっているので読んでいて面白い。やはり人間は人間の行動に興味があるのである。西田幾太郎『善の研究』に3度挫折した小生でもついていける内容。
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日本近代思想における「京都学派」の位置づけ,その思想の特色については熊野純彦編『日本哲学小史』(中公新書)がきれいにまとめている。あ,これも中央公論新社だ。
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コメント
西田幾太郎の本は難解であると同時に、おそろしく読みづらい文章ですよね。弟子の三木清や戸坂潤の文章は現代の私たちにも読みやすい文章なので、西田の文章の読みづらさは彼個人の資質によるものと思えます…
と、その点へのツッコミも含め、西田幾太郎の思考と格闘し続けている人物に小林敏明がおります。西田哲学へ分け入る際の最良の手引書として小林氏の西田論数冊は心強い存在「であるのである」。
投稿: 拾伍谷 | 2014.05.31 03:17
小林敏明氏は廣松渉の弟子にあたりますね。小生はこの人の著書を通じて廣松渉の思想について理解を深めることが出来ました。
そのあたりは本ブログの記事「廣松渉の思想」(2008.01.02)に書いております。
日本で日本なりの思想を展開しようとすると京都学派の人々も,廣松渉も,「近代の超克」という難問を避けて通ることはできない様子です。
投稿: fukunan | 2014.06.03 00:53