香港中文大学がSTAP細胞の正しい作り方を特定?
先日の理研の調査委員会報告は,「STAP細胞の有無」に関する報告ではなくて,「Nature掲載のSTAP細胞論文に不正があったかどうか」に関する報告だった。
とはいえ,みんなが知りたかったのは,やはり「STAP細胞の有無」。
STAP細胞が無いとなれば(作れないとなれば),STAP細胞自体が嘘,論文も嘘,というようにすっきりした構図となる。
しかし,STAP細胞が有るとなれば,論文の不正は厳然として不正であるにもかかわらず,社会的には問題視されなくなり,STAP細胞作製の功績が讃えられて,小保方博士(暫定)および共著者たちの地位が再び浮上する可能性もある。
そうなるとややこしい。
◆ ◆ ◆
前置きはここまでにして,STAP細胞騒動をややこしくしてくれるような話が香港からやってきた:
「香港中文大学,STAP細胞作製の再現に成功か」(WIRED, 2014年4月2日)
香港中文大学の李嘉豪(Kenneth Ka-Ho Lee)教授が"ResearchGate"というサイトでSTAP細胞作製プロセスを順次公開しているのだが,4月1日に
"Dear All,
I am shocked and amazed by the qPCR results for the 3 day-old control and STAP cultures. Totally speechless!
ENJOY!
The STAP Saga continues..."
という文章とともに,定量PCR分析(幹細胞のスクリーニング手法だという話)の結果を公開している。
その内容,端的に言って,STAP細胞の正しい作り方がわかったようだ,ということである。
ただし,その作り方は理研が公開しているやり方(酸に浸す処理)でもなく,ヴァカンティが公開しているやり方(酸に浸す処理+研和処理 (Trituration))でもない。
研和処理だけ,のようだ。
上述のサイトの定量PCR分析結果のグラフによれば,研和処理だけを行ったコロニーには未分化細胞のマーカーであるOct4(参考)が大量に存在することが示されている。
研和処理でSTAP細胞が作られることが分かった場合にはまた大騒ぎが起こることだろう。
李嘉豪教授が称賛されることは当然として,某ユニットリーダーが
「論文やプロトコル(作成方法)の記述が悪くてご迷惑おかけしましたが,STAP細胞はこの通り作られるのです」
とか言って開き直る可能性がある。
香港中文大学の実験結果が,日本国内のSTAP細胞騒動をさらに混乱させるかもしれない。
◆ ◆ ◆
【続報:2014年4月4日加筆】
その後,李嘉豪センセーはギブアップしました。
ResearchGateより李嘉豪教授の最後のコメントを引用:
Thank you all for your excellent suggestions on improving the data. Personally, I don't think STAP cells exist and it will be a waste of manpower and research funding to carry on with this experiment any further.
<中略>
I will no longer blog on this page any more. I want to get back to doing my own science interest.
スタップ細胞は存在しないと思うし,これ以上の追試はマンパワーと金の無駄だろうということ。
それはそうと,ユニットリーダー凹様が週刊新潮の取材に答えたとか。桜色のコートとヴィヴィアン・ウェストウッドのトートバッグ姿だったというどうでも良いファッション情報付き。
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